実演鑑賞
満足度★★★★
前々作がやはり暴力描写のある芝居で、同じくオーストラリア産の、入植白人とアボリジニの確執の話だった。今作は現代(携帯電話が出てこないので20世紀の戯曲と推測)のメルボルンの荒廃地区に勤務する二人の警官が、とある日の数時間に体現する暴力とその心理構造を炙り出すような作品。
役者の負荷が大きい戯曲で、violenceが暴発する狂気の瞬間だけでなくそこに至る精神状況の過程を辿る。戯曲の台詞がそれを誘導している。破滅的な結末は、告発的作品な色を帯びなくもないが、カタストロフに浸るだけでは済まさない要素がある。
観たばかりの青年劇場「裸の町」は真船豊による昭和前期の、小さな人間たちを描いた作品だったが、「鼬」と同じく金銭、引いては当時浸透の過程にあった資本制の持つ暴力性を描き、システムの中の人間の闇に触れる。両者全く違う作風だが似た風景を見る感覚を覚えた。