其ノ街の涯ル 公演情報 中央大学第二演劇研究会「其ノ街の涯ル」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★

    終演後、客席から「難しかった!」との声があり 同感だ。「其ノ街の涯ル」の3つの街は、それぞれ穏やかな終わりに向かっている。3つの街は、当日パンフに概要が書かれていなければ、分かり難い。その上で自分なりの解釈をする。物語は3つの街を入れ子のように展開するが、本来交わるのか否か、時空を隔てた3つの街を同じ土俵(舞台)で楽しめるかによって印象が異なる。観客を選ぶ公演だろう。

    卒業公演ということもあって、33名のキャストを登場させるため、3つの街を表しているが、少し無理がある設定だ。3つの街にある共通した何らかの問題を重層的に描こうとしているようだが、今ひとつピンとこない。
    この世の終わりという凄まじい危機に直面した時、人はただ普通に生きることが出来るのか、それとも…。
    (上演時間2時間 途中休憩なし)

    ネタバレBOX

    舞台セットは世紀末を表すかのような不気味な雰囲気を漂わす。中央に変型階段があり、上部を設え空間的な広がりを観せる。上手には洞窟風の出捌け口、下手には布で被われたテントのような廃小屋。その上部に穴があり、何度か落ちるシーンがある。ここが別の世界へ通じる穴(途)らしい。側面の壁には布切れが括られている。何カ所かに字幕が映る。

    3つの街の名は「荒ビ」「和ギ」「果テ」であり、それぞれ特徴がある。「荒ビ」は、砂嵐吹き荒れ五感の失われる街、「和ギ」は、水に沈む色付きと色無しの街、「果テ」は、月の落ちる満たされない街、である。この3つの街は時空を隔てているが、ある穴によって繋がっているようだが…。

    第一「荒ビ」のアケビという青年が街を出る道を探し、穴に落ちる。街の名「荒ビ」=「遊び」の通り、妖によってアケビは気まぐれで慰み者にされていた。
    第二「和ギ」=「凪」に通じ、本来穏やかであるはずが、色付き(特別)と色無し(普通)に区別されている。街にいるマチは、病気の妹を救うため教会へ背き改革派へ加わる。一見 人類平等を説く神父は、洗脳によって歪な支配を行っている。偽宗教色。
    第三「果テ」はその名の通り年月の経過した後、ある土地の「端て」である。明松紅(コウ)は、世の中に嫌気が差し、山に籠ることを決意。娘は何らかの理由で父と確執がある。

    冒頭、あと7日間で滅びる。3つの街とは別世界…「最後にあなたの大切な(愛する)人と過ごしましょう」と呼び掛けている。この台詞に呼応するシーンが、終盤に 3つの街を重ねるように描かれる。三方の場所で、アケビは恋人、マチは妹、コウは父と語り合っている、そのスポットライトの中の光景は尊く美しい。

    逆境や絶望の淵で、それぞれの生きるための選択を描いており、人と人との関りが生きる希望に繋がる。厳しい現実に立ち向かう人に勇気と希望の光を指し示す。そんなヒーマンドラマをSFファンタジー(もしくは怪奇)風に描いた公演か?

    舞台技術は工夫を凝らしており、物語に漂う空気感のようなものを表す。3つの街以外には、雑踏・電車や車エンジン音などが遠くで聞こえる。「荒ビ」では暴風雨のような荒々しい音、「和ギ」は水が滴り落ちるような心細さ。そして教祖を暗殺しようとする際は、鐘の音+ピアノを奏で緊迫感を出す。照明は目つぶしなど強烈な照射、スポット的な心象表現を組み合わせた効果が見事。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2022/03/13 16:51

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