冬のライオン 公演情報 東京芸術劇場「冬のライオン」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    うっかり予習していかなかったのが悪かった。かつてどこかで見た記憶もあって(主な公演だけでほぼ十年おきに四演目)高をくくっていたのだが、この家族、夫婦、親子共にかなり複雑。しかも十二世紀の西ヨーロッパの政治地図が今とは違う。第一幕の冒頭でその関係は手際よく説明しているのだが、状況がすっきり頭に入らない。言って見れば、西洋歌舞伎の世界、新劇にすれば西洋版「子午線の祀り」の平家物語の世界だ。
    人間関係と欲望地図が分かってしまえば、あとは国を手にした国王の権力劇、その家族劇としてよく出来た芝居なのである。
    森林太郎の演出はセリフ劇に徹していて、きれいに整理された美術の舞台で登場人物たちがそれぞれの欲望をぶつけ合う。国王夫妻は、佐々木蔵之助と高畑淳子、過去の例では平幹と麻美れい、山崎努と岸田今日子〈これは見ておけばよかった、いや忘れたのか?〉という当時ではなるほどと言う顔合わせだが、こういういかにも権力ずくの国王夫妻が似合う組み合わせから、今回は地位をいいことに勝手放題の国王夫妻のジレンマとしたところが新しく、まるで、今の世界情勢に合わせたみたいで面白い。その権力の横暴ぶりが親子、夫婦、兄弟と個人的な関係に落ちていくと手に負えない。そういう人間的な矛盾に焦点を当てて下世話な芝居にしているところが今回の見どころで、佐々木、高畑ともに王冠を常時つけているのがジョークにしか思えない演技で舞台を圧倒する。助演陣もそれぞれ役柄を好演。舞台俳優が多いなか、テレビの葵わかなが、ガラはあっていないのにうまくはまっている。舞台としてはよくまとまっていていいのだが、この芝居の面白さを味わい尽くすには観客も勉強していかなければ楽しめないのが辛いところだ、しかし一月公演、中日でもほぼ一階は満席だった。何より!である。


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    2022/03/09 12:05

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