アンドゥ家の一夜 公演情報 さいたまゴールド・シアター「アンドゥ家の一夜」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    老人力
    オーディションで選ばれた年配者の劇団、さいたまゴールドシアター。ナイロン100℃のケラが脚本を提供したというので第3回目の今回、初めて足を運んだ。ふだん小劇場の芝居を見ている者ほど、老人一色に埋め尽くされた舞台に面食らうのではないか。「老人力」という古い流行語が頭に浮かんだほど。
    ケラの脚本は少人数の芝居も悪くはないけど、やっぱりこういう出演者が40名を越えるような芝居をやらせたら本領を発揮する。多くの若手を起用したケラマップの芝居「ヤング・マーブル・ジャイアンツ」などはある意味でこの芝居の若者版だったような気がする。
    カーテンコールで拍手をするときには「みなさんいつまでもお元気で」という、およそ芝居の観劇後とは思えない感慨が湧いた。

    ネタバレBOX

    設定は比較的シンプル。学生時代、演劇部にいたメンバーが、数十年後、ポルトガルで隠居生活を送るかつて演劇部の顧問だった教師のもとを訪ねてくる。集まるきっかけは教師がすでに死の床に就いているから。
    話を面白くしているのは、危篤のはずのアンドゥ氏が健康な姿であちこちに出没し、そしてその姿がアンドゥ氏の会おうと思った人物にしか見えていないという怪奇テイスト。
    大勢の登場人物をそれぞれに個性を持たせて描き分けるケラの脚本が冴える。約3時間という上演時間は、ケラの芝居では普通とはいえ、役者たちの演技のテンポともいくらか関わりがあったのではないか。老役者たちの健闘を讃えつつも、同じように大人数の役者が登場する劇団、柿喰う客の芝居を思うとき、激しい動きはやはり若さの特権だということをあらためて感じた。

    開演前から役者たちが舞台に出ていて、それぞれが演じる場面を稽古している。演出家の蜷川幸雄もそのなかに混じってアドバイスをしている。平床をすべて使った広々とした舞台。そこに蠢く数十名。台本を持った若い人が何人か混じっているのはプロンプタだろう。さすがにドクターの姿は登場人物としてしか見られなかった。台詞覚えはともかく、定年後に舞台に立とうなどと考える人は普通の人よりもよっぽど丈夫な体の持ち主ではないだろうか。
    プロンプタをあからさまに待機させたり、開演前から役者を舞台に上げて稽古をさせるというのは、必ずしも脚本の上がりが遅かったからではなく、素人くささも人間くささのうちだと割り切った演出のねらいではないかと思う。先日、フェステバル/トーキョーで来日したリミニ・プロトコルなどはまさにそういう作り方だったし、さいたまゴールドシアターもこのフェスティバルには別の作品で参加していた。
    開演前から役者を舞台に上げるというのは別に青年団の専売特許ではない、蜷川幸雄も以前からよく使う演出だ。

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    2009/06/27 20:24

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