鳥の飛ぶ高さ 公演情報 青年団国際演劇交流プロジェクト「鳥の飛ぶ高さ」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    2つが1つになる方法が重層的に描かれる
    企業買収、虐殺、征服、結婚、公武合体、合唱・・・等々と、何かと何かをくっつけて1つにする方法が重層的に描かれていた。
    その層の断面を見せてくれる舞台はさすがだと思った。

    ただし、いささか消化不良。こちらのキャパに、というか語学力にも問題はあるのかもしれないのだが・・・。

    ネタバレBOX

    とにかく、1つになろうとする話がしつこく次々と現れる。

    主軸は、フランスの会社が日本の便器会社を傘下に収めようとする話(2つの会社が片方に飲み込まれる)であり、日本神話の形を借りて描かれるのは、半島からの民族が土着の民族を征服する話(民族が他民族を飲み込む=国家が1つになっていく)、そして、ルワンダでの虐殺は、片方の部族を殲滅し、1つにしようとする話(2つの民族を1つだけにする)の3つ。

    つまり、すべて「力(ちから)」によるものであり、対する相手は「対抗」するのだが、結果的に、1つめは「懐柔−容認」、2つめは「闘争−服従・浸透」、3つめは「排除−消滅」というところか。

    そこに結婚(なぜだが異民族同士の結婚が3つも現れる)や、皇女和宮の公武合体(フランス人女性が強く惹かれるという設定も面白い)などという要素も加わる。
    極めつけは、「私」という、この舞台の作者が現れ、自らが仲介となり、舞台と観客をなんとかくっつけようとすることだ。
    合唱という声の合体まで使って。

    とにかくあまりにも多くのものが次々と現れる。
    問題は、その多さだけではなく、「言語」だ。
    つまり、日本語で語られる台詞はいいのだが、フランス語の台詞は舞台上方の字幕に頼らざるを得ず、また、フランス語と日本語が交互に現れるところもあり、そのための視線の行き来が結構大変なのだ。
    さらに場面展開も早い。

    また、役者さんたちに気持ちの余裕がなかったように見えた。観ている側(というか私)に余裕がなかったせいでそう見えたのかもしれないが、もっと余裕があれば、笑えるシーンではきちんと笑えたような気がする。

    大長編だったオリジナルを今回の長さにまとめた、ということからなのか、どうも一気呵成に進みすぎ、息抜きができない。
    笑いのパートがそれにあたるのだが、それほど笑えないのだ。
    唯一、合唱のパートはかなり面白く、笑顔で見入って息抜きにはなったのだが。

    フランス企業が日本企業を買収するというエピソードは、今、この景況を考えると、テーマとしては、中途半端に古い印象は否めない。
    会社法の改正で、外国企業による日本企業の子会社化が行いやすくなったと言っても(実際はそうでもないのらしいのだが)、どうしても10年ぐらい前の、日産のカルロスゴーン氏や日本長期信用銀行の外資売却、数年前(リーマンショック以前の)の海外からの大都市圏の不動産への投機的活動が思い出されるからだろう。
    ま、その設定は、原作からの踏襲で、しょうがないのかもしれないけど。

    子会社化(または買収)の手段として、日本企業内部の欲望をかき立てて、内部から切り崩し、さらに新製品の投入とマーケティングによって実績を上げ、企業価値を上げるという手法はうまいと思った。
    ライブドア以降、敵対的な合併・買収には敏感になっている日本企業攻略としては、極めて適切かつ有効な方法だろう。

    しかし、フランス人コンサルタントのなんと怪しいこと! 
    マーケティングというコトバの裏に隠れ、ブレストなんていう方法で煙幕を張り、出てきたコピーがアレで、しかも、それに対してもっともらしい理由をつけるあたりは、マーケティングによる販売や事業展開自体を揶揄しているように思えてならなかった。
    それで、購買意欲が高まり、新製品の便器がじゃんじゃん売れるというのもなんともやるせない(もちろん、私もそういう消費者の1人として)。

    そう考えると、最後にフランス人社長が、「私が欲しかったのは、人です」と言うのも大いに怪しい。完全なる眉唾ものだ。

    なぜなら、彼らは日本人の思考(嗜好)もきちんとマーケティングしてあるはずで、ここは日本神話のエピソードを紹介するときに「征服した相手をも神として祭る」というあたりの、日本人的なメンタリティーを見事に掴んだ発言としか思えず、その言葉は、新・猿渡社の社員の心には響いていたようだが、舞台では空しく響いていたように感じたのだ。

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    2009/06/24 03:44

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  • みささん

    いやーそんなこと生まれてこのかた、一度も言われたことがないので・・・。
    ありがとうございます。
    ただし、私の見方が合っているかどうかは、神のみぞ、いやオリザのみぞ知るというところでしょうか(笑)。

    2009/06/29 02:56

    最後の文面。あきらさん、貴方を褒めているのですよ。
    レビューの内容と言い、コメントといい、貴方の文章そのものを拝見して頭脳明晰と感じているのですよ、あきらさん!
    貴方のことです!(^0^)


    2009/06/28 11:20

    みささん

    コメントありがとうございます。
    シーンの重なり方というかタイミングと、別シーンなのにテイストが同じだということで、見にくい感じはありました。私の場合は、それと字幕ですね、大変でした。

    ただ、最初に上演時間のアナウンスがあったときに、この固いイスでその時間はキツイと思ったのですが、私は辛さも長さもそれほど感じませんでした。

    もっとも私の同じ列の方で明らかにコックリしたりイラついている方はいましたけど・・・。イスがつながっているので、振動するんですよね。

    それと、小学生ぐらいの子どもが何人か会場にいたのですが、中には飽きてぐらぐら動いたり、隣の親らしき人に話しかけていたりしている子どももいまして(子どもには字幕無理だろっていうか、この演劇がそもそも無理だろ・笑)、ああ、その後ろにならなくて良かったな、とは思いましたけど(笑)。

    >同感ですね。
    この心理を巧みな言葉で表現するあたり、流石です。頭脳明晰ですね。感心しました。

    ・・・これは、オリザさんのことを誉めてらっしゃるのでしょうか? であれば、同感です。オリジナルはフランス人のことでしょうから、(私の感じたことが合っているのならば)この部分はオリザさんの意訳ともいうべきところではないでしょうか。

    2009/06/28 02:22

    こんにちは。
    ワタクシ、これひじょうに疲れました。

    >どうも一気呵成に進みすぎ、息抜きができない。

    そう、その通りです。内容がありすぎて散漫してしまって楽しめない!(苦笑)
    終いには座ってることが辛かった。はっきりいって長すぎじゃね?みたいな・・。(^0^)

    >「征服した相手をも神として祭る」というあたりの、日本人的なメンタリティーを見事に掴んだ発言としか思えず、その言葉は、新・猿渡社の社員の心には響いていたようだが、舞台では空しく響いていたように感じたのだ。

    同感ですね。
    この心理を巧みな言葉で表現するあたり、流石です。頭脳明晰ですね。感心しました。

    2009/06/27 12:25

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