冬のライオン 公演情報 東京芸術劇場「冬のライオン」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★

    佐々木蔵之介の硬軟自在の演技は、ヘンリーの本心がどこにあるのか全くつかめない。リチャードに王位を譲ると言ったのに、いざリチャードがフランスの領土を手放すのを嫌がると、ジョンに王位を譲るのに変えるとか。いうことが二転三転する。一方、エレノア(高畑淳子)の方はわかりやすい。ヘンリーをとにかく愛している。なのに、ヘンリーは美しいロザリンドに心を奪われた。自分は愛を得られないために、あの手この手で振り向かせようとするが、ために逆に疎まれ、幽閉された。またお気に入りのリチャードに王位を継がせたい。一貫しているし、誇張のツボを押さえた演技も笑いを誘う。史劇というより、父親の気まぐれと術策に振り回される夫婦と父子の家族劇である。

    意外におもしろいのが、両親どちらからも忘れられた次男のジェフリー(永島敬三)。二幕冒頭のフィリップの部屋で「僕がいるよ。王位を僕に譲って」と嬉々として両手を広げる姿は、哀れかつ滑稽極まりなかった。2時間半(休憩15分)

    ネタバレBOX

    3人の息子に見切りをつけて、愛妾アレー(葵わかな=若く美しく凛としてはまり役)と結婚して新しい息子を産もうと突っ走る。しかし、エレノアに泣きすがられ、続いて脅されて、離婚許可のためにローマ教皇のもとへ行くのはあきらめる…。かと思うと、次の場では、アレーを起こして、ローマへ行く旅支度だと。この変化はなぜ? ラストの、地下のワイン蔵での息子たちとヘンリーの対決も、息子たちに打ち勝ち死刑を宣告したヘンリーが、いざという刹那に崩れ落ちて、息子たちを逃がしてしまう。これが老いというものなのかもしれないが、佐々木蔵之介が立派すぎて老いを感じられない。そのため、心変わりの理由が不明になってしまう。

    結局は堂々巡りの芝居。王位をだれに譲るか、フランス王に領地を返すのか、最後は何も決まらずあいまいに終わる。起承転結のドラマを期待していると裏切られる。その場面場面の駆け引き、掛け合いをこそ見る芝居なのだろう。史実ではヘンリーの後を長男リチャードが継ぎ、そのあとを三男ジョンが継いだようだ。何も決まらなかったので、結局、順当に兄、弟の順で継いだということだろうか。

    0

    2022/02/27 09:55

    0

    0

このページのQRコードです。

拡大