実演鑑賞
満足度★★★★★
観応え十分。
東日本大震災から11年を迎えようとしている。癒えない傷を負った人々に寄り添うように紡いだ物語。表層的には明るく元気に思えるが、けっして上っ面だけを描いているわけではなく、人の心の奥底に溜まった澱を落とすような清々しさを覚える。
物語としての展開はあるが、描かれているのは「人間」である。直接被災した人、直接被災はしないがその関係者、そして現地(東北地方)から遠く離れ、TV等の情報で惨状を知った人々。受け止め方の濃淡は違うが、それぞれの思いの中に辛さが残った。人が持つ感情は複雑、それを綺麗事ではなく、自分に向き合うことによって前進させる。そんな前向きで優しさに溢れた公演。最大の魅力は、被災した人、その人を見守る人、その建前と本音、もしくはどう接し対応すべきか分からないといった内面(心の襞)を撫でるように表現する。しかし、更に心の奥を見詰める自分自身。二律という難しい理屈ではなく、自問自答という苦悩する心を隠すような(日常の)健気な姿。感情の落差に心が揺さぶられる。その様子は全ての登場人物に負わせるのではなく、特定の人物にすることで深刻に追い詰めない上手さ。そして小学生の子供の目を通して敏感に察せられるという切っ掛け作りも巧みだ。
舞台美術がシンプルなだけに演技による感情表現ーー役者の演技力は素晴らしい。
そしてラストに明かされる衝撃の事実とは…ぜひ劇場で観ることをお薦めする。
(上演時間1時間45分 途中休憩なし)追記予定
2022/02/20 12:35