熱海殺人事件 公演情報 一徳会/鎌ヶ谷アルトギルド「熱海殺人事件」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    なぜかやたらに美しいラスト
    つかこうへいの代名詞である、岸田賞受賞作「熱海殺人事件」を、完全に別なものにしているが、そのエッセンスは確実に感じられる。

    おそらくは海のメタファーかつ犯人の記憶の場である、水が流れ込む四角いテーブルがある中央での、
    パフォーマンス(あるいはダンス)的要素を取り入れた、テクストの順序を変えた冒頭には、新しい解釈を感じる。
    演出の都合上、水がそこかしこに飛び散るために刑事役の俳優は競泳用水着を着用しており、
    それによって刑事とは思えない俳優の姿は、もはやギャグとしか言いようがないが
    テクストの改編はなされていないため、原作が持つ毒々しさも感じられる。
    そして犯人と婦人警官による、ねつ造された記憶の再現シーンと
    ラストの部長刑事の長セりフは、それまで見たきたものを一掃するくらいの(不必要なほどの)美しさを持つ。
    ドラマのない現代でドラマを捏造することのまがまがしさと美しさ。
    それはやはり、なぜかやたらに美しい。

    ネタバレBOX

    予算的な問題もあるだろうが、競泳用水着を着させる必要性があったのか疑問に思う。
    着ることで刑事的な印象を薄れさせ、原作から離れた地平に行くことは可能だが、ともすればギャグに捉えられる。
    この水着の件もそうだが、全体的にパフォーマンス色の打ち出しが中途半端に思える。
    テクストをほとんど変えずに、原作とは異なってパフォーマンス的にするのは難しい。
    どちらかに寄る必要がある気がする。

    また死んだ山口アイ子に普通のセリフを言わせる必要性もあったか疑問。
    別段死者の声の響きを持つセリフを言わせていたわけではないし、男女の別なく言わせていたので、単に演出の「面白そうだから」という興味ではないかと思ってしまう。
    それと関連して舞台右奥にサンドバックも、象徴的なアイコンとしては捉えづらい。
    ボクシングをするのも山口アイ子と木村部長刑事で統一性がないし、2人が共有する文脈が分からない。
    やはりこれも興味によるものではないかと思わせる。

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    2009/06/13 02:38

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