パダラマ・ジュグラマ 公演情報 おぼんろ「パダラマ・ジュグラマ」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    初日(いいねチケット)観劇。
    強雨で肌寒い日。にもかかわらず会場内は熱気に包まれ興奮状態ーおぼんろの人気の高さが知れよう。

    公演であるが、(コロナ禍)以前のような”おぼんろスタイル”ではない。今までの魅力は、舞台と客席の境目を曖昧にし、語り部(役者)が参加者(観客)の間を舞い駆けるといった躍動感を身近で観せ感じさせていた。そこに場内一体となった高揚感のようなものが生まれ、物語の世界に誘われていた。コロナ禍では、その演劇スタイルを貫くことは出来ず、舞台を一定方向(客席からの定点)から観劇することになる。しかし、今までのスタイルは参加者も物語の世界観にどっぷり入り込み、高揚(幸福)感に酔いしれながらであったが、この公演では舞台と一定の距離を置き内容をじっくり観ることが出来た。雰囲気に飲み込まれることなく、物語で伝えたい「生きる」「生きたい」と「命をいただく」ことの意味をしっかり描いていることが解る。また、おぼんろ らしい照明や音響といった舞台技術は素晴らしい。観た目は派手で美しいが、物語に潜む「必ずしもきれいな世の中だけではない」といった清濁併せ持つ世界観が浮き彫りになる。が、最後は清濁併せ呑むへ。コロナ禍を通じて おぼんろは、改めて その真の実力と新の魅力を引き出したと言えるのではないか。

    カーテンコール…さひがしジュンペイさんによれば、この演目は末原拓馬さんがなかなか再演したがらなかったと呟いていた。内容的に、どちらかと言えば分かり易いもので、意味深(度)といった面で物足りないと心配したのだろうか。
    今を生きることの大変さ。ある舞台関係者は演劇がなくても生きていけるが…そんな思いを抱く不安な日々を過ごしていると言っていた。演劇は映画や音楽等と同様、文化なのだ。それを廃らせるわけにはいかない。現実社会の苦しみを一時の舞台という虚構(世界)で癒され明日の活力となる大切さ。今、自分たちの演劇スタイルを貫けない中で、できる限りの創意工夫を凝らし、公演を行う行為(勇気)に無音の拍手と声援を送りたい。
    (上演時間2時間 途中休憩なし)

    ネタバレBOX

    舞台美術は、上手に高さある部屋空間、下手には板に近い所に部屋空間、この2つの空間を中央上部(上手の空間から下手の空間に繋がる)に設えている。上手の部屋空間から斜めに階段(可動式)があり、1階と2階を行き来して躍動感を出す。部屋空間としたが、完全に仕切るのではなく、四辺を柱のようなもので囲っており、敢えて場所などの特定はしていない。少しキレイ過ぎるが、廃屋・荒廃イメージといったところ。上手客席側に高さの違う平台が並び、別空間での語り。先の空間には赤い敷物があり照明効果と相まって美しく映える。

    物語は説明やチラシに詳しく書かれているが、閉じた世界と開かれた世界、弱肉強食、食物連鎖やヒエラルキーといったことを連想する。登場するのはニワトリ、キツネ、そして人間(工場長・ジュンバ=さひがしジュンペイサン)である。さて、閉じた世界は直接的にはニワトリ工場(通称:カイダム)であるが、大きくは環境汚染で自然界では食事情に窮していることも表す。ニワトリ工場では、産まれて すぐ雄鶏は潰され、雌鶏だけが生かされている。そこに腹が減った2匹のキツネ(トシモリ=富田翔サン、メグメ=わかばやしめぐみサン)が忍び込んで…。メグメには別に切羽詰まった事情を抱えているという同情の余地を残し、哀切を誘う。多くの雌鶏に隠れるように雄鶏(通称:タック=末原拓馬サン)と雌鶏に成りすました雄鶏(リンリン=高橋倫平サン)が絡み合った物語。二羽、二匹、一人という登場に弱肉強食ピラミッドを思う。

    カイダムは、決して美しい場所ではないが、外の世界も汚染に塗れている。しかしこの世は決して闇ばかりではない。夢や希望を持ち続ければ、素晴らしい世なのである、そんなことを訴えている。おぼんろ公演は、どれだけ参加者が想像して創造の世界観を楽しめるかにある。以前のように身近な臨場感を得ることは難しいが、逆に意識は眼前の舞台に集中し、物語を俯瞰して観ることができる。だからこそ色々な場面(時に四方に作られた舞台美術)を眺め回す必要はなく、物語に潜む魅力を想像することが出来る。

    おぼんろ公演の最大の魅力は、演出と舞台技術。照明は色鮮やかな照射、それも正面や側面壁に車輪のような回転、そして形はギヤ等の工場イメージ。音響・音楽は汽(列)車音、不穏や不安といった胸騒感、そして物悲しいピアノ旋律。場面ごとの変幻自在な観せ聴かせ方に酔いしれる。そして吊るされた裸電球が何となく幻想に光り輝く。外の星空=希望であろうか。
    もちろん躍動感と参加者を(おぼんろ)世界に誘う熱量は凄い。またバランスも良く、カーテンコールで、富田翔さんが稽古等を通じ準劇団員になったようだと話していたが、本当にその通りで違和感はない。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2022/02/14 23:06

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