ロング・タイム・ノー・シー 公演情報 ナイーブスカンパニー「ロング・タイム・ノー・シー」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    日中に雪がチラつき、物語の中で雪が溶けたら何になる、という問いが重なる偶然の光景。
    物語は前・後半に分かれるが、演出は展開に合わせて巧みに変化させ抒情的に観(魅)せる。もちろん役者の朗読…手紙の往復書簡という聴かせ方に合わせた“間”のとり方は見事!月海舞由サンと鹿野裕介サンの感情表現(仕方)が、単に役柄だけではなく何となく対象的に思え、興味深かった。
    舞台美術は、活けた花の陰影が美しくスタイリッシュに映える。演劇の総合的(動的演技等は除く)な魅力が味わえる公演。
    (上演時間1時間45分)【月海舞由サン&鹿野裕介サン】

    ネタバレBOX

    舞台美術はシンプルで、上手に岩下音(月海舞由サン)、下手に吉束理(鹿野裕介サン)が座り、中央に白幕(スクリーン代わり)が客席側に向かっても敷かれている。そこに大きな活け花。場面補足や詩情のような言葉が字幕で映し出される。これが実に印象的で、映された珠玉の言葉を胸の内で反芻している。

    一組の男女が出会って別れるまでを回想風に綴った往復書簡の朗読劇。
    前半は出会った頃、夫々が相手の趣向を探るような少しぎこちない展開。日々の何気ない思い出話、淡々と語られる言葉が初々しく微笑ましい。その情景は、青や赤といった鮮やかな色彩で照らし、また活け花を多方面から、時に真上から照射しモノトーンの陰影で落ち着かせる変化は喜怒哀楽のような感情表現を思わせる。理(こと)くんは、2つの嘘をついていた。1つは付き合い出した頃には、まだ妻がいたこと。総合商社勤務で上昇志向の強い妻と図書館勤務の公務員で安定志向の自分との意識の違いは決定的であったよう。学生時代から妻の後を追うような劣等存在だった自分が、音(おと)ちゃんと付き合い、自分らしく振舞えるようになった安堵感、嬉しさを実感。音響は静かで優しいピアノ旋律だけ。そしてもう1つの嘘が、自分には妹がいる(進行形)。しかし本当はいた(過去形)である。

    謎を残して後半へ(途中休憩なし、暫し暗転)。実は15年前に妹は殺され、殺した相手は音ちゃんの弟であるという衝撃の事実。音ちゃんは苦しみ、そして…。この事件によって2人の関係は大きく変わり、ドラマチックな展開へ。薄暗くし照明効果を出さず、逆に音響が高揚というか(胸)騒ぎを思わせるものへ変わる。音楽に掻き消されないほど力強い台詞。激情している様子がうかがえる。

    演技は、前半は2人とも淡々と語っているが、後半になると変化がみられる。音ちゃん=月海さんは椅子に深く座り淡々と話す(静的)。一方、理くん=鹿野さんは前かがみになり、時々ハンカチや手で涙を拭う仕草が観られる(動的)。別れを切り出し、別の人と結婚する音ちゃん、何とかやり直しが出来ないか未練を残す 理くんの心情の違いであろうか。暗転後、理くんのエピローグによって少し安心するのだが…。
    1日2回公演だけの組み合わせ、至極幸せな心待ちにさせてもらった。まさしく「コトバとココロの話」である。平日は1回(初日であり千穐楽)だけという贅沢な公演。
    次回公演(来月「売春捜査官」)も楽しみにしております。

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    2022/02/05 19:33

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