チョコレート哀歌<東京公演> 公演情報 ノラ「チョコレート哀歌<東京公演>」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★

    西﨑わか那さん/村井萌さんによる女2人芝居。「チョコレート哀歌 」は、甘酸っぱい味わいある物語。

    楽しめるが、2人だけの世界に入り込み、第三者である観客をその世界へ誘い込むことが出来ない、そんな もどかしさを感じる。全体的に浮遊感があり、不思議な空気感を漂わせている。大切な思い出が、手指の間からポロポロと零れ落ちてしまい、薄れゆく記憶に愛おしさを重ねるような作劇作。それだけに、もっと観客に寄り添った観せ方だったら…勿体ない。
    (上演時間50分)

    ネタバレBOX

    グリーンフェスタ2022特別参加作品。
    回想劇、同時に瑞々しい感覚劇でもある。それを紡ぐための舞台美術は、形や大きさが異なる箱が重なり、全体に白い布が被せられている。舞台と客席の間にはジグソーパズルのピースが庭砂利のように敷き詰められている。また天井にはいくつかの裸電球(星の輝きイメージ)が吊るされている。
    上演前は街中の騒音や靴音が聞こえ、現実感を漂わすが、物語の雰囲気は、2人の衣装が白っぽくゆったりとしており、何となく現実から遊離している感じ。上演前・後で世界観の変化をつける巧さ。照明は特に印象的なことはないが、色彩ある諧調で美しく観(魅)せていた。

    幼女2人が親しくなり、折り紙、クレヨンでのお絵描きといった遊び。他の子供からの悪口に泣き叫ぶ少女と慰める少女。夜空の(流れ)星を眺め感傷に浸る、など脈略のない出来事を点描していく。これは時々の思い出を描いているため。2人の軌跡を辿るには、一諸に過ごした時間描写が大切になってくる。そこで幼馴染という設定にし、親しい友人が或る日突然消えてしまい、喪失感に打ち拉がれる。

    ラストに観せる何とも淋しい姿ー当日パンフに脚本・演出のしおと、ひかりさんが「私がいつまでも焦がれてしまう一人の人間に向けて描いた作品」と書いている。実話で等身大の物語。ひとの出会いと別れは偶然と必然であるが、突然の出来事に整理できない感情、その乙女心が浮き彫りになる。が、この種の話を劇的にするには、相手が亡くなる等、強烈なインパクトがないと印象に残らないだろう。しかし、そんなことは承知の上で、公演はあくまで本当の思い出話を大切にしているようだ。

    現実の場面は確かにそうであったかも知れないが、舞台となると間合いや台詞(泣き叫ぶシーンでは被ってしまい聞き取れない)も含めた演技で観客をどれだけ自分たちの心象世界へ導けるかが重要。刺激・強烈的なラストが用意出来ないのであれば、それに代わる工夫をし、観客の関心や興味を惹く必要があろう。2人だけが体験したかのような特別な世界観に入り込みすぎて、観客の意識を置き去りにしたのが残念なところ。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2022/01/29 16:23

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