実演鑑賞
満足度★★★★
観応え十分、お薦め。
演劇としてのモキュメンタリーといった公演。登場する人物・家族等はフィクションであるが、サハリン(樺太)という 地の出来事、その歴史はドキュメンタリードラマとして構成されている。単にサハリンにある街と人々の暮らしを描いたクロニクルではなく、演劇的要素をしっかり取り込んでおり、上演時間3時間はそれほど苦にならなかった。
約100(1890-1980+α)年のクロニクル、当日パンフに第1幕~第4幕と幕間における時期・場所そして登場人物を表した人物相関図が書かれており、物語の展開における系譜はそれほど混乱せず観ることが出来る。サハリンは「北海道の宗谷岬から約43㎞北にある島」だというが、行ったことはない。ほとんど知らない 地、その場所における激動の歴史ーー視点は、そこで暮らす人々の日常的で平板な営みの中で捉えている。またパンフには年表もあり、切り取った場面だけではなく、その前後の事件や背景を知ることで、物語で描こうとした意図が分かってくる。第1幕目には、以降の幕に繋げる系譜を表すため、すべての人物(全キャスト)を登場させ、なるほどと思わせる大胆な幕開け。(物語の展開:樺太→サハリン)土地の繋がり、人の血の繋がりといった、いわゆる地縁血縁を知ることで、自ずと「土地」や「人間」が主人公であることが分かってくる。物語は特定の主人公を定めることなく、市井の人々の営みと時の流れによって重層的に立ち上がってくる。そして記録写真やスナップ写真を適宜映し出し、その時々の光景を見せることで事実を突き付けるという巧さ。もちろんシーンに合わせた生演奏や生歌が叙情豊かにしている。
(上演時間3時間 途中休憩10分)