ガラテアの審判 公演情報 feblaboプロデュース「ガラテアの審判」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    面白い! お薦め。
    法廷劇らしく緊密で緊迫感ある会話劇。物語は単に法廷内だけではなく、法曹界の体質、公判前整理手続、社会との関わりが巧みに取り込まれた社会派ドラマの様相を呈する。特に公判前整理手続の場面では公判での争点を明確にし、公判場面は専門的な台詞も出てくるが、それを別の言葉で言い換え解り易くすることで観客の集中力を途切らせない。実に上手い観せ方である。
    (上演時間2時間)

    ネタバレBOX

    舞台美術は、一般的な刑事裁判(書記官席はないが、庶務官が別場所に着席)の法廷光景。客席はL字型でその対角線上に裁判官席。おのずと観客席は傍聴席といったことになる。

    公判前整理手続(6回)の主な登場人物は、裁判官、検察官、(国選)弁護士、そして庶務官。そして公判(7回)は、その3人と事件の被告、4人の証人が加わり緊迫した質問や尋問口調が展開していく。社会との繋がりはレポーターとして公判の様子を中継し、いかにこの裁判が難しく そして世間の注目を集めているか。アンドロイドによる犯罪(隣家の7歳の少女殺害)の初裁判を日和見主義の事なかれ判事・ケンザキ アスミ(坪和あさ美サン)、うだつの上がらない国選弁護士・フルカワ バンリ(坂本七秋サン)、そして検察は及び腰の様子見で経験の浅い女性検事に担当させる。法曹界の権威主義への皮肉が、冒頭、女性検事・キリシマ ヨーコ(陽向さとこサン)の憤りに如実に表れる。

    公判前整理手続について、弁護士から犯行事実については争わないが、被告/通称ジャック(新井裕士サン)の責任能力を争点にしたいと…。アンドロイドの責任能力とは何か、公判中に明らかになるウィルスによる(悪意の)誤作動といった、人間とは違う要素を持ち込み観客の興味を惹く。証人の証言から明らかになる事実は法廷劇の醍醐味だが、さらにAIという特殊性が物語を重厚にしている。公判では人とアンドロイドを比較し問題(責任能力)の所在を際立たせながら展開する。例えば精神鑑定と精密検査や、倫理感(刷り込み)やウィルスといった見せ場。それらが犯行教唆に当たるのか否か。検察・弁護士の双方の主張を行う 陽向さんと坂本さんの緊迫した演技が法廷劇の面白さを支える。

    スポットライトを浴び、レポーター・ワタナベ レオナ(久保田伶奈サン)が、何故この裁判が社会の注目を浴びるのか。そこには人間とアンドロイドの共存・思惑といった社会問題が潜んでいることを説明する。アンドロイドに労働(力)を奪われ、働き場所を失った労働者階級、一方 安価で従順なアンドロイドを利用したい人々(資本家階級か)が、それぞれ「反ロボット」と「親アンドロイド」として敵対しデモ、弾圧、暴動を裁判所近くで繰り広げる。法廷と目に見え(表れ)ない社会・世間とを巧みに結び付ける。

    検察当局はアンドロイドの製造者(メーカー)ではなく、本体を逮捕し送検した。今後発生するかも知れない事件への見せしめのよう。それだけ人間とアンドロイドの相違が見られない近未来SF。いくつもの問題点を指摘しながら、観客に考えさせる。
    ただ、アンドロイドの諸々を規制する法整備が出来ているのか 否かが判然としない。公判前整理手続を進める中の台詞にあったが、内容は明らかにされない。そんな中で人間に適用する刑罰は馴染むのか。ラストの検察の求刑と判決内容、その量刑の捉え方をみても疑問符が付く。しかし、世界で初めてアンドロイドによる殺人事件、それの判決→判例として見れば、議論が漂流するのは当たり前。演劇としては、裁判過程を通して社会的影響の大きさ面白さを十分堪能させることに成功している。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2022/01/22 10:37

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