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CASSIS
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公演情報
INUTOKUSHI「
CASSIS
」の観てきた!クチコミとコメント
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ボム木偶(68)
満足度
★★
エンクラ派の戯れ言です。
守りに徹した、挑戦していない舞台、僕にはそうみえた。
ネタバレBOX
いくつかの小さな物語が、同時並行的に入れ替わり立ち替わり演じられていくけれど、大きなテーマはみんなひとつ。「理想」が現実に負ける、不可能性のはなし。そして、それを、僕らはあらかじめ、知っている。だって、「犬と串」という劇団のテーマが、すでに「理想と現実のギャップ」となっているんだから。
そうなると、はじめに、人間と動物たちが楽しく過ごす、楽園のようなケーキ屋さんが出てきて、そこに、人類愛みたいなものを説く女主人が出てきた時点で、「ああ、このケーキ屋さんが崩壊するはなしかな」と予想できてしまう。
同時進行する、セックスの経験のない人間たちが、妖精化して雑誌をつくる編集部の話も、草食系男子のツヨシが、草食系の楽園をつくろうとするはなしも、みんな、崩壊という結末で結びつくのかな、とあたりがつけられてしまう。
舞台が全て、「理想と現実のギャップ」をみせる、そのために進行して行く。キャラクターも情景も、そのための歯車みたいだ。たとえば、ケーキ屋さんの女主人の親友の女の子が出てくるけど、彼女は、ただ、女主人のことばを信用して、破滅する、それだけのために出てくる。彼女がどんな人なのかとか、そういうことは全然出てこない。
この舞台は、テーマがはじめにある。そして、そのテーマのために、物語が用意される。そして、そこに必要な役割としてのキャラクターたちが、機械的に配置されていく。演出も、わりとオーソドックス(形式としての演劇を疑っていない感じ)。おそらく、それが、この劇団の基本的な姿勢なのだろうと思う。
テーマが伝わらないことへの不安も、感じる。とても慎重に、繰り返し、テーマが説明される。過剰だと、感じる。舞台中央のカシスの池も、冒頭に「カシスは血の色」といわれてしまうので、血のメタファーだと分かってしまう。たくさんのファンタジー的世界を、わざわざ「現実」ではさむのも、周到だけど、あざとさがみえてしまう。
結局舞台は、あらかじめ説明されているテーマ通りに、予定調和的に展開して行く。そうなると、部分部分を断片的に、コント集的に楽しむしかないのだけど、それも予定調和。結構はじけた舞台を演出しているけど、それも、はみださない程度。そこには、驚きや楽しさはない。いかに慎重に、はみ出さないようにするか、そこに注意が集中していて、それが、今を象徴しているようにも思った。
1時間半観ることが出来たのは、俳優たちのおかげ。そこはゲキケン、きちんと訓練がされていて、魂のないキャラクターが、役者の個性で、それなりに生き生きしてみえる。テンポも、スピードも、全部かれらのカラダがあればこそ(脚本は、もっさりしていると思ったので)。ぜひ、彼らを、別の作品で観たいと思う。
犬と串は、現在のゲキケン、唯ひとつのアンサンブルだ。たくさんの所属劇団をかかえるエンクラ(早稲田大学演劇倶楽部)とちがって、ここには、役者たちに選択肢がない。それが、さびしい。次も、彼らは、犬と串で、歯車をいきいきと演じるのだろうか。
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2009/05/28 12:33
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