実演鑑賞
満足度★★★★★
#西條義将 #古山憲太郎
#津村知与支 #生越千晴
#伊東沙保 #成田亜佑美
#名村辰 #蓬莱竜太(敬称略)
【初日】
♬かつて、これほどまでに愛しく、優しく、心地の良い木々の陰はなかった♬
BGMで使われた『Ombra mai fu』の歌詞。太い梁、立ち並ぶ材木が作る陰で、より良い作品を目指して模索し衝突し蠢く演劇人たち。一見その陰は居心地の良い場所には見えないけれど、演劇は人生の縮図のようで、ロープが絡み合うようにマーブル状の人間模様。人の思いはスレ違い衝突する。covid-19によって寸断された人間関係。他者や社会と隔絶された時間と場所の中で自分自身を見つめ、未来に不安を抱きながら、存在価値や人生の意味を考えてみたりする。やがて、かつての場所を、あの陰を愛しく思うのかもしれない。そして同時に、作家演出家の、俳優の、スタッフの、陰に対する優しい気持ち愛しい気持ちが劇場を包み込んでいるに違いない。だからきっと、思いを寄せ合い衝突しながらも何かを生み出そうとした陰は、振り返ると心地よかったと思うのだろう。
105分の全てから演劇人の叫びが聞こえてくるようであったし、同時に演劇人に対するエールであったと思う。
演劇人の苦しみは、そのまま全ての人の苦しみでもある。辛さや生き辛さは誰にでも共通する。分かり合えないと感じる家族との摩擦もそうだろう。蓬莱さんの中にも、深く根を張っているのではなかろうか。
あのラストシーン。彼等の背中から匂い立つモノに触れて、心から湧き出る泉を搾る演劇人がたくさんいるに違いない。演劇を愛する者も同様だろう。わたしの席から見えた大好きな生越さんの横顔に、そしてその隣で一瞬生越さんに視線を向けた成田さんにも、震える思いと溢れる泉の存在を認めて、演劇人の2年間を両手でひと掬いし抱きしめた。
これまで何度も書いてきたけれど、モダンスイマーズ は今作も3000円で上演している。映画を2回観たつもりで生の俳優の演技を目の当たりにして、終演後にお茶を飲みながら語り合える。
⚠️東京芸術劇場シアターイースト
1/30まで