私の心にそっと触れて 公演情報 メメントC「私の心にそっと触れて」の観てきた!クチコミとコメント

  • 映像鑑賞

    満足度★★★★★

    こういう芝居に遭遇するたび、「芝居に敵うもんはなか」とドヤ顔したくなる。体内物質の分泌が促進され、血行も良くなり尻の痛さを忘れる。良い事づくめである。
    劇場観劇を諦め、配信を選んだが、正直音声はよくない(録音マイクが舞台から遠いのだろう、ノイズレベルかなり高い)。見始めて一瞬しまったと焦ったが、意外やすぐ芝居から目が離せなくなり、休憩を挟んで終いまで演劇的快楽を味わった。
    ・・という事で、公演は終了し後は配信しかないが、自分的には配信でもお勧めである(ただし「巻き戻し」せずに鑑賞するには音量の上げ下げが必要かも。)

    主催がメメントCと山の羊舎とあり、メメント→山下悟氏へ演出依頼したのだろうと勝手に想像していたが、実は山の羊舎の企画であるようだ。舎の主たる活動は別役実作品の上演で(それも年一回あるか無いか)、2015年別役フェスでの「後ろの正面だあれ」は私に別役実世界の魔力を見出させた一つだったが、このささやかなユニットが昨年上演した「メリーさんの羊」(山の羊舎の前身が「メリーさんの羊を上演する会」という一風変わった集団)に、女1役で出演した民藝・白石珠江が今作での妻役。その夫である認知症を発症した元医師(奇しくも認知症にも通じた脳外科医)と共に実にハマり役であった。
    舞台は基本、老夫婦宅のリビングらしい場所で、介護事業所のスタッフや夫婦付き合いの長い旧友、新たな夫(二番目)連れの娘といった訪問者が夫婦の「現在」に絡むが、やがてかつての同僚で職場を追われた元医師(現看護師)や、難病を患い僅かな希望にすがるように治験に同意したピアニストの登場によって「過去」が顔を覗かせ、老医師の現在を形作っているだろう人格の構成要素が見えて来る。そしてそれらは同時に、医師自身の手(脳)からこぼれ落ちて行くものとしても描写される。
    この芝居が醸し出す面白さの源をうまく説明できないが、久々に嶽本女史の書いた言葉のユーモアと力強さに触れた。

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    2021/12/25 00:14

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