はらいそ少女解脱教 公演情報 早稲田大学劇団木霊「はらいそ少女解脱教」の観てきた!クチコミとコメント

  • 映像鑑賞

    満足度★★★★★

     上質な作品。配信を拝見したが、良い出来であり、制作からの案内も丁寧で良心的である。

    ネタバレBOX

    天国や楽園を意味するキリシタン用語・パライソ(パライゾとも表記)ではない。この点にも引っ掛けというか捻りが加えられている。舞台は通常の板上に以下に説明するセットを組みその側面及び背後を袖・通路として用いる。
    演劇空間としてのホリゾント下手には高さ2.5m程、幅6m程の大きなパネルが立てられているがこれは壁。その表面には大災害(大地震)によって崩壊したと思われる都市の高層建築等が映り込んでおり、その上手に先ず槐色、次に白の布が天井から板面迄下げられて、裏の通路への目隠しとして機能している。壁の手前にはLの字を右方向に90度回転させ丁度階段の踊り場のような敷石を最高3段に重ねたような石積みが設えられている。当然のことながら、最も高い部分へは、階段になった部分を上ってゆく。L字のコーナー部分のみ、少し高めの段が置かれて居る為、最上部へは2段になっている。

    物語は、地球が終わる頃という状況設定。どんな集落も子供は殆ど生まれずここに流れて来た子達の中にも最期の子供と称された者達が居る。子供達は眩暈や吐き気等体調不良を抱える者も多く既に彷徨う他、即ち生きながらの死を唯日延べする以外の道は無いことを重々承知している、唯最終的破滅から逃れようと大人達が語って聞かせた“はらいそ”を目指し旅を続けているのである。最年少は15歳の少女・コユキいつも地べたに絵を描いている子である。偶々やってきたこの地が多少地面が高く、地層が安定し、安全で何とかなりそうだと長居しているうちに旅する大人・ラウルに出会い、彼の持っていた刷毛と顔料を用いて壁に壁画を描いている。因みにラウルは文章を書く人間だった兄の書物を持ち歩いており、朗読して聞かせるが、それは既に亡くなっていると思われる兄への鎮魂の儀式のようである。他に星に極めて高い関心を寄せる少年・アスカ。極めて明晰な判断と合理的で人間性に富んだ対応からリーダーを務める17歳の少女・キキョウ。サブリーダー格で父母の踊るダンスを観て感動し自らも踊りの中に落ち着ける時空を見出しているヒカリ。聡明だが、彼女も眩暈に襲われる。表面的には憎まれ口ばかりきき皮肉屋で素直ではないと取られがちなイズミ。実は大変に感性が鋭く傷つき易い為、棘を持っている。彼女も薬を飲まなければ眩暈に襲われてはらいそ行きも危ぶまれている。
    脚本は、曇りの無い目で見たら必然的に今作の描くような世界が近未来に訪れるといった内容だ。真っ直ぐ、自分及び自分達の問題だと捉えている所が良い。また、オープニングで流れる賛美歌のような歌唱、この時の照明、進展する劇中で使われる音響・照明も実に効果的だ。ラストは、当然予測がつくが、矢張り舞台上で表現されるとグサリと突き刺さる。このような結末に逢着しない為に何が我々にできるのか? どのように実現するのかについてもプライベートラーニング等も考慮しつつ解決策を模索したい。量産・大量廃棄を初め現行の世界システム・制度自体非常に大きな問題を孕んでいるのだから。

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    2021/12/24 16:47

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