実演鑑賞
満足度★★★★
野木萌葱、奇想天外の調子が戻ってきた。
深海救急艦が深海で遭難した潜水艇の救援に向かう。その艦内の一杯セット。王冠を伏せたようなちゃちな艦内セットの、中央に遭難艇との接続ハッチがある。艦長(西原誠吾)と操縦士(神農直隆)の二人組が、深海400メートルから800メートルへと救急に向かうところで幕が上がる。
遭難した潜水艇には三名の生存者がいる模様だが、救急艦の二人はなにかおかしい・・・・と疑惑を持ちながら遭難艇に近ずいていく。とにかく出だしはうまい野木節で客を掴んでしまう。
そこから二時間足らず、観客は、深海冒険談につき合うわけだが、ま、お話は超SF級。冒頭のサスペンス溢れる深海潜水譚はやがて、後半はエエッツという展開になるのだが、そこは面白ければいいので、議論の可否については目くじらを立てることはあるまい。変に現実に寄せていないところが却って良い。こういう風に話を飛ばせるだけで作者の劇的才能はよくわかる。全く何もわかっていない新国に目をつけられてひどい目にあい、ここ数年才の発揮を見るところがなかったが、今回は自分の劇団に戻ってのびやかにかつての良さをとりもどしている。小さい小屋だが満席。
新宿のはずれの地下の小劇場で、こういう小洒落た芝居に出会うと、芝居見物の面白さを堪能した気分になる。
俳優は救急艦の二人は小劇場の名優たちだが、救われる方の三名もそれぞれにうまく個性を出している。