鈍色(ニビイロ)のヘルメット -20歳の闘争- 公演情報 KUROGOKU「鈍色(ニビイロ)のヘルメット -20歳の闘争-」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★

    主演の富川陽花(はるか)さんが顔は岡田奈々(AKBじゃない方)、空手は大会優勝経験もある腕前。大谷翔平といい最近の天は気前よく二物も三物も与えまくっているようだ。「ゲバルト・ローザ」こと柏崎千枝子がモデル。
    高校時代、『サウンド・オブ・ミュージック』を観た帰りにデモ隊と機動隊の衝突に巻き込まれ、投石で怪我。彼女を介抱してくれた東大生(小坂広夢氏)に恋をする。彼は後に東大全共闘の議長を務める存在に。モデルはカリスマ山本義隆。
    フリーのカメラマン役の松本みなみさんが時代背景の語り手となり、東大全共闘に参加した少女から見た安田講堂陥落までを綴る。議長の演説の説得力。「戦争に勝った国は学問に秀でた国である。国の根幹とも言える学問の発展を阻害するものと闘う事は学生達にとって自明の理である」。
    日大全共闘との抗争や共闘、田中美津をモデルにしたような女性解放運動家の登場。革命歌『インターナショナル』が轟くが政治思想は希薄で、一つの「青春グラフィティ」として仕上げてある。片桐健人氏と久原大知氏がコメディリリーフとして機能。小守航平氏のルックスがまさに当時の学生運動家顔で、山本直樹の描くキャラのような目付きに好感。
    東大の少女が正義の為にせっせと機動隊に投げる火炎瓶を作る現実。これが本当に日本の風景だった。その頃の空気感を味わいたかったら、是非観劇を。

    ネタバレBOX

    物足りないのは”敵“が描かれないこと。大学が警察(国家権力)を導入して、学生達をどんどん追い詰めていく様が必要。徹底した暴力に晒されてこそ、武力闘争に踏み切らざるを得ない空気感に共鳴出来る。自分達の意思を超えて、予め定められていたかのように物事は着実に進んでいく。選択肢など初めからなかったのだ。
    主人公の友達や家族も敵に回った方が良かった。特に高校時代からの親友(守谷花梨〈もりやかりん〉さん)に「変わったね」と決別を突きつけられて欲しかった。
    ラストの『エーデルワイス』は、機動隊突入の時に流れるべき。暴力で血塗れに打ち倒されていく面々の対位法として。ジョン・ウーならスローモーションで白い鳩を飛ばすだろう。

    日大全共闘を潰した日大の番犬、「関東軍」を率いていたのは今話題の田中英壽(ひでとし)前理事長。悪質タックル事件の指示で有名になった井ノ口忠男元理事もそこにいた。日大全共闘を潰した御褒美に日大の権力構造の恩恵に預かり、取り立てられていったのだ。非常に分かり易い、これぞ日本のシステム。

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    2021/12/18 14:46

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