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人でなしの恋
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公演情報
劇団テアトルジュンヌ「
人でなしの恋
」の観てきた!クチコミとコメント
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ハンダラ(10424)
映像鑑賞
満足度
★★★★
中々ユニークな作り。観方を間違うと初め戸惑うかも。華4つ☆
ネタバレBOX
2時間4分の作品。上演会場は大学内にあるウィリアムズホールだ。舞台は手前と奥に分かれ奥は2階部分という設定、上手に2階へ上がる階段。上がった場所は素通しで客が演技を観ることが出来るように夾雑物は一切ない。登り切って下手に板が渡され本棚、壺、箱等がホリゾントに沿って設えられている。下手壁の前には長持が置いてある。
手前下手にテーブルと椅子3脚、上手には箱馬が2つ。テーブルではキョウコとその女友達2人が座って話す場面が多く、何度か母との対話の際に用いられる。下手で語られる台詞は総て現代日本で用いられている話し言葉を使用。上手は江戸川乱歩の小説の朗読。照明は殆どスポットライトのみが用いられ、他の部分は暗くて見えない。物語は下手での対話と朗読を交互に繰り返す形で終盤迄進み、江戸川 乱歩の原作をじっくり感じさせる中々効果的な演出だ。スポットによる照明を多用することで、観客の観る場面を焦点化し集中させている点で高評価できる。つまり照明、音響の使い方が非常に上手い。
殊に広い屋敷を持ち名家であるカドノ家に嫁いだキョウコが、婚姻後半年ほどを経てカドノの自分に対する態度がどこか疎遠になったような気がして夫の浮気を疑い、遂には嫉妬に狂った自分自身で秘密を暴こうと夫が自分が寝たのを確かめて毎夜通う離れの2階を調べるに至ったこと、何日も掛け、何度調べてみても決して浮気相手も何らかの証拠も見付けることができなかったこと、それ故、夫は幽霊と恋に落ちているのではないかとの妄想を抱く迄追い詰められていたこと。そんなに不安定な精神状態に置かれながらも嫉妬の炎に煽られ或る夜夫が離れへ出掛けた後をつけ、鍵が掛かって入れなかったものの注意深く様子を窺がってみると夫と女の恋語りの声が聞こえた。翌日夫の部屋から鍵を盗み出し離れの2階へ上がってみても女が隠れられる場所は長持の中しか思いつかない。生身の女がそんな所にずっと隠れて暮らす等ということは不可能だとは理屈で分かるものの、嫉妬に狂った状態では、まして鍵迄盗んで決行したからには後に引く訳にも行かない。遂に長持を開けてみると、その中に衣類等と共に箱に入った1尺ばかりの高さの少女の人形を見つけた。夫は幼少の頃偶々この人形を見付け恋に落ちた。知られてはならぬと離れの2階の長持に隠し恋した異様に美しい少女人形の下に、夜毎通っていたのである。キョウコはその事実に気付き人形を壊せば夫は自分の下へ帰ってくると考えて人形を殺した。だが夫はバラバラにされ殺された人形を発見するや後追い自殺をしてしまったのだ。彼が娶ったのも唯彼の魅入られた人形に似ていたからに過ぎなかったことが後に分かる。そしていくら美しいとはいえ、人形に夫を奪われる自分は何なのか? を自問する。どうやらそれはヒトではない現代のIT器機だったらしい。というオチが結論なのだが、格差社会に生き、人間扱いされない社会を生きる若者達の変身譚という具合に考えるとカフカの「変身」を読む時の不気味を覚える。
ところで今作、最初の30分程は音声が無い。時々、通行人のような人々が少人数で舞台を横切ったりノートのような物を持ってフィールドワークか何かをしているような様子を見せたりはするが、この長い無音の場面を観ながら観客は「屋根裏の散歩者」を思い浮かべたり、窃視者のメンタリティーを考えながら徐々に乱歩の世界に入ってゆくことを期待されているような気がしながら観て居れば、これはこれで面白い。
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2021/12/17 22:20
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