実演鑑賞
満足度★★★★
2021年度秋季企画展「新派 SHIMPA――アヴァンギャルド演劇の水脈」関連公演として上演された樋口一葉の小説「十三夜」、奇しくも十三夜に近い十五日に拝聴。過去に何回か聴いたことがある朗読劇。
この作品は、昭和22(1947)年9月の三越劇場、久保田万太郎の脚色で新派によって劇化初演されたらしい。初代水谷八重子が自ら選んだ「八重子十種」にも数えられる名作という。今回はその大御所、水谷八重子の近くで学んだ波乃久里子さんが主人公のお関、歌舞伎の舞台にも立ったことがある新派の喜多村緑郎氏が幼なじみ・録之助を演じる。練達の俳優たちの情感あふれる朗読、そして生音調 目にすることが少ない道具での見事な情景描写に唸る。
幼なじみの恋路を照らす十三夜の月あかり――。声と音がつむぐ新派の世界に、言葉に耳をすます。
アフタートーク、波乃さんの開口一番は「緊張した!」だった。彼女ほどの大ベテランでも緊張するという、演じれば演じるほど奥が深い演劇の世界。いや~聴応えがあり、一夜限りの至福の時間。堪能。
(上演時間1時間30分 朗読+アフタートーク)