実演鑑賞
満足度★★★★
5日午後、東京・錦糸町にあるすみだパークシアター倉で上演された劇団桟敷童子公演『飛ぶ太陽』を観た。これは、知人の役者・もりちえが出演していた関係からであるし、この劇団の出し物に毎回強い衝撃を受けるからである。
今回の新作は、戦後昭和20年に作者・東憲司の故郷である九州・福岡県で起きた147人が犠牲となった二又トンネル爆発事故をもとにしたフィクションであり、上演時間は約2時間。このところ原田大二郎や村井國夫を客演に呼んでいた劇団は、今回は宮地真緒と斎藤とも子という女優二人を招聘。
舞台は、爆発事故の起きる前の町の賑わいと、爆発事故後の悲惨さを、復員兵・松尾与市を軸に、地元の農作物行商人や炭鉱附属病院の医師らの生活から浮き彫りにしている。特に行商人で与市の母であるトワ(鈴木めぐみ)と行商人・澤西典子(板垣桃子)との関係や、典子と典子の妹で国民学校の教員・文子(宮地真緒)とのやりとりが重きをなしていて、多くの作品で重要な役を任されている大手忍が後半にややさらっとした感じで登場してくる関係からか、鈴木、板垣、宮地の3人の存在感が大きかった。特に板垣と鈴木の活躍には目を見張る物があった。劇団生え抜きの役者らしい演技だった。
客演の2人もなかなかの活躍で、特に宮地の病弱で精神を病んでいる文子の事故との関わり方とその責任感に悩む姿はさすがという印象。斎藤とも子の客演は今回で2回目だと思うが、医師として事故によって忙殺される様子が緊迫感に包まれて、これまた唸らせられた。
知人・もりちえは、元従軍看護婦として事故後に斎藤演じる医師と治療活動で活躍。最近共演が増えた夫君の瀬戸純哉も劇団の雰囲気に慣れてなかなかの演技をみせていた。
次回公演は来年六月。楽しみである。