ぶっかぶか 公演情報 ここ風「ぶっかぶか」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    面白い! お薦め。
    ペンションを経営する夫婦とその兄や妹、そして3組の宿泊客が織り成す心裏(喜)劇。劇は心を揺さぶり、自信いや地震が劇場も揺さぶった(東京23区は震度3だったが、役者は平然と演技を続行、さすがだ)。
    一人一人のキャラがユニークだが、どこにでも居そうな人物の特徴を強調させることで、強烈な性格を際立たせる上手さ。相手を思いやる心遣いが出来ず、蟠り、そして場の空気を読めないといった人々が抱える苦しみと哀しみ、それを心に押し込み、明るく元気よく振る舞う姿に可笑しみをおぼえる。
    タイトル「ぶっかぶか」…人間、やはり身の丈に合った役割や立場でないと、居心地が悪く精神的に苦痛なのかなぁ。しかし、役者は役にピタッとはまっており見事。
    (上演時間1時間55分)

    ネタバレBOX

    舞台美術は、古民家を改築したペンションの共用スペースをしっかり作り込み(敷居の跡あり)、物語の情景を支えている。上手に丸テーブルに椅子、中央が出入り口、下手に書架や窓があり外光が射し込む。薄がりに灯る傘電気が風情を漂わす。室内にも関わらず土足だが、スリッパにしたら動き難そう。

    物語は、訳ありで不思議な3組の宿泊客を通して描いたハートフルコメディ。まずペンションにいる人々の紹介をしながら、早くもキャラを立ち上げる。ペンションの相馬修太郎・瑞希夫妻(香月健志サン・天野弘愛サン)、瑞希の兄・浅野陽介(牧野耕治サン)、妹・麻希(斉藤ゆきサン)が居候のように住んでいる。
    宿泊客は3組だが、正確には1組の物置会社社長・観山勤(斉藤太一サン)とその兄・政生(後藤英樹サン)だけで、他の2組は必然の客・関根優真(はぎこサン)と偶然に宿泊することになった笠原裕也(三谷健秀サン)。

    本来の客である観山勤は陽介がアップした動画を偶然観たところ、情緒不安定になってしまう。心配した政生が陽介の居場所を探し出し、静養と偽り弟を連れてくる。この動画、催眠効果を発揮するらしいのだが、陽介が逃げられた女房に向けて撮った動画で、「催眠を解く」ことを意図している。元はプロポーズの時「俺と結婚したくなる」と催眠術をかける真似をし、女房はフリをした。いなくなった女房に「催眠術を解いたから自由だ」という意の動画が、社長というプレッシャーに耐えきれずにいた勤の潜在意識を刺激し精神的な解放をもたらした。この兄弟は父・母の連れ子同士で血の繋がりはない。幼い時から比較されながら育つという愛憎が切々と語られる。

    必然に客となった優真は、ペンション夫婦の妹・麻希が自分の双子の妹の墓参りに来た後を付けて来た。一年前、社員旅行で行った清里の寮の火事で優真の妹は焼死した。その後、麻希は会社を辞めた。妹が命を懸けて助けたかった友達・麻希に興味を持ち、ペンションまで来た。2人で話すうち、性格の違う妹がなぜ彼女を助けようとしたのか理解できたような心持。

    偶然に宿泊することになった裕也、幼いころから耳が聞こえなくて放浪している。このペンション近くで木から落ちて怪我をしている勤を背負い、ここまで来た。大人になるにつれ不思議と耳が聞こえるようになり、身体的な変化は精神的な変化をもたらす。聞こえなくてもよいことが自然と耳に入り、人との関わり、距離感が掴めないもどかしさ。「ありがとう」と言われた相手から持参のスタンプを押印してもらう。取りあえず1万人(瑞希が1万人目)達成、新たに1万人と関わるスタンプ目標を持つ。

    ペンションという人との出会いや関りが大切な仕事、それを訳ありな事情を抱えた人々を登場させ、人間関係というか人との距離感という描き難い微妙な事を実に巧く観せる。催眠術的な動画の件は、作・演出の霧島ロック氏がワン・シーンだけ登場し種明かしをするようで笑える。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2021/12/12 15:39

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