夏への扉 2021 公演情報 enji「夏への扉 2021」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    面白い! お薦め。
    手の指の間から大切な思い出がポロポロと零れ落ちるが、その愛しい思いをそっと救い上げ、固く握りしめ楽しかった時を想像・回想する。ラストの明るく力強い台詞…「楽しい夏休みだった。私はこの思い出を一生忘れない!」は心に響く。寒風吹きすさぶ中、劇場へ向かったが、帰路は心が ほっこりするような心持になれる、そぅ心が温まる秀作なのだ。
    (上演時間1時間40分)

    ネタバレBOX

    舞台となるのがビートルズが来日した1966年、昭和の雰囲気が漂う喫茶店「セブン・ドアーズ」。店内セットで気になるのが、いくつもあるドア・・上手から「ヒルトン」「地下鉄」「病院」「国鉄」とあり、それぞれに所要時間が書かれている。カウンター、腰高スツール、テーブル等を設え、内装(レンガ壁)、壁に多くの写真を飾り 実に丁寧に作り込んでいる。何となく行ったことがあるような雰囲気の喫茶店、懐かしさを覚える。上部 後方には暗幕があり、それを開閉することで物語の時代・時季を表す。

    この作品は2002年に初演、2006年に再演、さらに番外公演も実施しているという。何度も上演し(観)たくなるのが頷ける。公演でも2002年当時を思わせる携帯電話を使用するなど細かい配慮。主人公・桑野明日香は、母が亡くなり喪失感に苛まれている。その様子を心配する恋人の隆。或る冬の日、胡散臭い男が、癒しの香を売りに来る。彼女は「明日への活力がわく香」を所望し、それを嗅いだところ、’66年夏にタイムリープ・・「夏への扉」を開けたのだ。実はタイムパラドックスを避けるため、彼女が生まれる前、すなわち存在しない年代を描く(理屈ではなく)。両親や好きな叔父がまだ生きている。ビートルズが宿泊しているホテルの近くにあるこの喫茶店は賑やか。活気のある日々を満喫し、いつしか元の世界へ戻りたくないと…。

    舞台美術の見事さはもちろん、時代の季節感を出すため、後方の暗幕を開閉する。冬の現在は暗幕で仄暗くどんよりとしている。一方、暗幕を開けた’66年は明るくカラッと晴れた青空を思わせる。衣装も時代や時季にあわせ着替える。外から店内に入ってきた父の顔は汗がいっぱい。明日香の後を追ってタイムリープした隆のワイシャツも汗で濡れている。2002年という未来だから分かる これからのこと、逆に1966年当時でしか知り得なかった事情が明かされ、自分が本当に愛され望まれて生まれた。今、亡くなった人々との楽しかった夏の日々は思い出しかない。しかし人は(楽しい)思い出だけでも生きていける。

    音楽はもちろん、レコードで聴くビートルズや日本のグループサウンズの懐かしの曲が流れる。物語で登場する平本恵は、いつの時代でもいる熱烈なファンを表すが、ビートルズは特別な話題性をもっていたようだ。そう言えば、明日香が嗅いだ香は客席(2列目で観劇)にまで漂ってきた。その匂いこそが熱気臭のようなものか。
    物語(脚本)の面白さ…人が持つ懐古、回顧、郷愁といった思いは、いつの時代になっても色褪せない輝きを放つ。それは自分のものでしかないのだから。ラストの明るく力強い台詞が心に響くのは、今となっては誰とも共有できないが、それでも過去に存在したことは事実。それを胸に刻み(思い出し)歩んでいくのだろう。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2021/12/10 18:16

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  • ご来場頂きありがとうございました!

    2021/12/12 05:31

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