実演鑑賞
満足度★★★★
毎回何がしか新味のある桟敷童子だが今回はまた異色作。戦後史に埋もれたある事件の紹介、描写に徹したと言って良い作品となっている。登場人物は恐らく創作だろうが、亡くなった住民百数十人中には居たであろう想像に収まる人物たちが登場する。敗戦後の一歩を健気に踏み出た時(1945年秋)に起きた筑豊炭鉱の町の爆発事故が題材である。東憲司氏がこだわる土地と歴史に絡めた作品は多いが、「昭和20年11月12日午後5時19分」の唱和をこれでもかと挿入し観客の耳に刻みつける。(現に覚えてしまった。)ただ事実を題材にしようとドラマを書いてきた桟敷童子が今作では事実であることにこだわり、着地させた。これに至る経緯または意図について例によってあれこれ想像をめぐらしてしまうが、またいずれ。