ダウト 〜疑いについての寓話 公演情報 風姿花伝プロデュース「ダウト 〜疑いについての寓話」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    2回目。
    観客の期待と熱気、口コミでどんどん盛り上がっていく正しい演劇ムーブメント。感謝。

    ネタバレBOX

    亀田佳明氏がどんどん魅力的に見えてくる。背を丸めて手帳に字をクチャクチャと書き込む姿。伊勢佳世さんとの夕暮れの中庭、ベンチでのシーンは美しい。『シスの復讐』のアナキン・スカイウォーカーのようだ。オレンジ色に世界は染まりカラスはカアカアと鳴き続けている。

    津田真澄さんの語る世界観人生観、そこから得た哲学が凄まじい。圧倒される。「貴方はお知りにならないでしょうが、それが世界なんです。」「卒業したらここであったいい事だけを持って行き、嫌な事は全てここに置いていくんです。息子にはそう教えました。」

    伊勢佳世さんのリアクションが少々オーバー気味か。余りに技巧派すぎて何をしても計算尽くに見えてしまう。ちょっと頭の悪そうな、抜けている天然女性のぼんやりとした目線が、二人の対決を見守る観客の目線とリンクしなければならない。映画版でこの役を演ったエイミー・アダムスはメリル・ストリープとフィリップ・シーモア・ホフマンという化物に挟まれて「ずっと吐きそうだった」と語った。那須佐代子さんと亀田佳明氏の人生を賭けた対決も、彼女からすれば余り興味の持てないどうでもいいことだったりする。そこがいいのだ。

    亀田佳明氏の目線から今作を紐解くと、当時はタブー視された同性愛者の物語とも取れる。同性愛者である事を肯定し、聖職者として隠しながら、同じ苦しみを抱えた少年にシンパシーを感じている。今となっては病気でも異常でもない、尊重されるべき一つの生き方だが、当時は時代が悪すぎて、忌むべき犯罪者のように扱われてしまった。そう読み取るとこの物語は更に混迷を深める。「言えないこともあるんです!全てを口に出せるとは思わないで欲しい!」

    ラストの那須佐代子さんの表情。

    原作者ジョン・パトリック・シャンリィ(映画版の監督も務めた)はこの作品を書く切っ掛けとなったのは「911後のアメリカを包んだ異常な空気だ」と語った。意図したものは勧善懲悪のスッキリとした物語ではない。登場人物も観客も誰一人スッキリはさせず、もやもやを抱えたまま帰途につかせる作品。ジョン・ゲーガン神父の児童性的虐待事件はモチーフに過ぎないのでは。

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    2021/12/09 05:58

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