飛ぶ太陽 公演情報 劇団桟敷童子「飛ぶ太陽」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    敗戦直後の大事故で147人も死んだのに、占領軍案件なので、新聞はどこも沈黙し、被害者住民の訴えに、弁護士たちはこぞって背を向けた。福岡の二又トンネル爆発事故。この事故を、2週間前に復員して火薬処理作業に参加した朴訥な青年与一(古田知生) と、老いた小柄な母トワ(鈴木めぐみ)を中心に描く。戦争末期に陸軍が秘密裏に運び込んだ大量の火薬、担当した占領軍中尉の無造作な焼却処理、興味本位で見物していた住民を襲った突然の悲劇、肉片が飛び散り、呻き声が溢れる地獄絵。医師(斉藤とも子)と元従軍看護婦(もりちえ)の熱く冷静な現場の采配が見事だった。巡査部長の原口健太郎も好演。

    さらに、行商仲間の姉典子(板垣桃子)と、国民学校教諭の妹文子(宮地真緒)の姉妹の話がもう一つの柱になる。どんぐり拾いに行った29人のこどもが巻き込まれて死んだ。文子は自分の病気が良くなるようにとどんぐりを拾いに行った子供らの死に、精神を破壊される。典子はその介護に疲れ切り、妹が死んで涙も流さなかった。そんな自分こそ「破壊されてしまった」という典子。しかも典子はトワと、何も知らずに火薬運びを手伝った負い目もある。両腕を失ったトワと、典子に見られる、傷つき生き残ったもののその後の生活をいろいろ考えさせられた。

    長期にわたり、説明するだけでも一苦労の話を、母子と姉妹の悲劇を中心に、心揺さぶるドラマに仕上げた。背景から現場の混乱、事故後の補償裁判闘争、現在の駅舎状況までを、ぐいぐい引き込んで見せた。コロス的住民たちの言葉が、ナレーションでもあり、叫びと訴えでもあって、効果的だった。冒頭12分で崩れ落ちる橋と紅葉🍁のセットも見事。1時間55分

    ネタバレBOX

    事実を報道しようと奮闘する地元の小さな新聞(筑豊新報)記者(大手忍)の記事を、西日本新聞が掲載し、三日間の続報を行う。占領下の新聞の気骨を示した話だ。また、東京の弁護士が一人だけ「長い戦いが考えられますが、信念を持って取り組みたい」と、住民代表の典子の手紙に答えてくれる。ここで目頭が熱くなった。理不尽を許さず、困難に立ち向かう人の凛々しい姿こそ感動を与える。

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    2021/12/07 16:06

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