発明家と探検家 公演情報 Oi-SCALE「発明家と探検家」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    自分好みで面白い! お薦め。
    3つの物語。2つの例題と1つの問い。あなたの答えが真実であります様に…掘っても掘っても底深い人の心に迫ろうとする。
    脚本は、オムニバスと言うか小説の連作集のような構成で、先々の展開を予測するのは難しく、というよりは予測不可能で、ミステリアスなところが魅力的。この物語を支えているのが圧倒的な演技力と存在感を出している村田充さんと林灰二さんの2人。
    ちなみに自分が観た回は満席で、増席していたほどの人気ぶり。
    (上演時間2時間弱 途中休憩なし)

    ネタバレBOX

    舞台セットは少し高くした板(実験的で独特な世界観の表出)。その板を電飾したポール数本が囲み 同じように裸電球を吊るし舞台枠を表す。しかし基本は素舞台。その外側に半周するようにパイプ椅子が役者分 置かれている。上演前は空席だが、徐々に役者が現れ着席していく。上演前の薄暗い舞台、点灯した裸電球、中央のパイプ椅子の上にあるメトロノームの刻む音をスタンドマイクがひろう。同時に音響としての波音を流し耽美と静寂さを漂わす。この舞台雰囲気に飲み込まれる中、林さんが登場し前説、その巧みな話術に引き込まれたまま物語は始まる。先の2人以外、基本的に役者は黒衣装。そして物語に応じて小道具等を運び込み、衣装も変えて登場する。薄暗い中での場面転換は、役者の動きを観せることによって物語の分断をしない妙。

    物語は、評判の占い師カワクボケイジ(村田充サン)のもとへやってくる客のそれぞれの相談事、占ってほしいことを通して展開していくスタイル。客ごとに内容が異なるが、3つの物語に共通した観せ方は同じ。人生の岐路に立ち大きな選択を迫られた登場人物が、何を信じるべきか悩み もがきながら下す決断を描いている。3つの物語から浮き彫りになる “真実をそれと裏付けるもの” を挑発的な内容を通して実感してほしいと…。

    物語の具体的な構成は・・・
     第1話は、或る医師が妻の実家の援助で医院を開業しないかと持ち掛けられているが、それを受け入れると身持ちの良くない自分が縛られるような気がし、この話を受諾すべきか。
     第2話は、1冊で売れっ子作家になったが、2冊目が書けず編集者から、彼が尊敬する作家のある部分を模倣してはどうかとアドバイスを受け、困惑している。その尊敬していた作家は、複数の作家が作り上げた虚像であり、自分が目指す(書きたい題材)は何なのか。
     第3話は、オリンピックに出場出来そうだった有名なフィギュアスケート選手、妊娠しているが 同時に子宮癌にも罹患している。第1話の医師は癌手術の必要性を説明するが、彼女はどうしても子供を産みたいと。そこで医師は或る老人ホームに入居している先輩の元女医を紹介しアドバイスを求めるよう勧める。
     これら3つの話は、客から占い師に相談話をし将来を占ってもらうという共通の展開。占い師は、結論めいたことは言わず逆にどうしたいのか本音を聞き出そうとする。
     そして最後の話、精彩のない男が自身の身の上話を始め…。今まで占い師が出会った客とは違い、今度は占い師自身が身の上話をし、その結果招く悲劇。しかし精彩がなかった男が行動を起こし、罪を犯し肉体的な拘束、逆に精神的な自由を手に入れるという皮肉。こうしたらという命題めいたものが提示されるが…。3つの話と命題は、それぞれの内容が深く、考えさせるもの。自分に向き合い本当の自分とは、という自分探求ーそれが自分自身にとって一番つらく怖いことではないかーを描いている。ラスト、比喩的に用いられた”鏡に映る自分”は本当の自分ではない、という台詞が心に響く。

    この占い師、実は悪友 眞一郎(林灰二サン)がおり、その助けを借りて、よく当たるという評判を得ている。見料が5分10万円、誰かの紹介がなければ予約できない。この予約という一定の時間稼ぎがポイント。そして悪友と知りあった所が…。
    内容は思索的で少し小難しいと思われたが、2人の台詞のやり取りにクスッと笑える、ちょっとポップさも感じる仕上がり。しかし「真実」に目を凝らし、様々な「真実」を逆(嘘・虚)から捉えた剥き出しの人間の底を描いた作品、観応えがあった。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2021/12/06 19:37

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