スペキュレイティブ・フィクション! 公演情報 NICE STALKER「スペキュレイティブ・フィクション!」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    2021年冬…高校部活(SF研)を通して心の成長を描いた青春騒動記(喜)劇。恋愛の噓と本当、その虚実の駆け引きに怪異を絡め、SFの雰囲気らしく纏めた佳作。
    「本当にあんたは、面白いね」は、ヒロインが主人公に向かって言った言葉。この公演も台詞同様に面白かった!
    (上演時間2時間5分 途中休憩なし)

    ネタバレBOX

    舞台美術は、斜めに設えた板上にドアや窓を思わせる枠組みを吊るしたシンプルな造作(SF研 部室の設定)。上演前や薄暗い照明時には、枠にある電飾(点灯)が美しくもあり、少し妖しげ。下手奥にスクリーンがあり、劇中でSFに係る専門用語が発せられると、スクリーンに解説が映し出される。その解説文も難しいが、何となく言いたいことは解る。

    物語は、SF研に所属している高校1年生の善雄善雄さんが先輩(2年生)の太田ナツキさんに恋心を抱き、何とか付き合ってもらおうと奮闘するが…。部活がSF研ということから専門用語が多く飛び出すが、(恋愛)心理や行為に絡めた用い方で、説明にあった「『科学』では定義することができない『不可怪』を再定義する思弁、熱弁、詭弁の数々。」は、告白時に用いた手法や行動そのもの。心は科学で説明しきれず、青春期の熱に浮かされた恋愛物語、それを怪異という視覚に捉えられない事で表現しようとしている。

    主人公の善雄善雄さんの テライ と ケレン に満ちた表現の可笑しさ、ヒロインである太田ナツキさんの嘘か本当か曖昧で、思わせぶりな姿に翻弄される。2人の心情を中心に同級生や先輩、さらにはSF研顧問や保健室の教師を登場させ過去・現在・未来という時の流れを形成する。あくまでSF領域を逸脱させない巧みさ。登場人物一人ひとりを丁寧に描き、それぞれが抱えた どうしようもない 思いを救い上げる。しかし深刻に描くのではなく、あくまで軽妙さは失わない。

    「これからが、今までを決める。」という決め台詞。善雄善雄さんが書いていた日記が未来ではベストセラー、記載内容が現実になるのであれば、噓の記載は正さなければならない。漫画の「未来日記」(サバイバルは別にして)のイメージを持たせる場面ーそれが居る筈のない妹・藤本海咲さんの不思議な存在と行動。青春期にある傷つきや悲しみ、もしくは喜びといった物語は容易に作れるかもしれないが、そこには既視感が付きまとう。それを出発点(前提)にし、すでに描き尽くされた物語にせず、その先の(現在のSFが将来、科学的に解明するような)新たな作品作りを目指しているようだ。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2021/12/04 22:40

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