さいはての街の塵の王 公演情報 尾米タケル之一座「さいはての街の塵の王」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    面白い! 
    チラシの陰気な絵柄、説明から一見 骨太作品と思えるが、演出には軽妙さもありバランスが良い。
    塵も積もれば山となる…意味合いは少し違う喩えだが「塵の王」とはそういう事かと納得。さいはての街とは、時代や場所に関係なく渦巻く人間の「想い」を普遍化するような表現にしている。ただ物語を紡ぐにあたって、場所はある程度 特定した処に設定し、現実(人間界)と異界の中で、自分とは何者なのかを探るようだ。その重い「想い」の裏に隠された感情が「辛い」「消えたい」「会いたい」等といった声になる。その感情を顕わにするのも、させるのも人間である。人は人から逃れられないのかもしれない。
    (上演時間2時間30分 途中休憩含15分)

    ネタバレBOX

    舞台美術は中央奥に長方形を刳り貫いた厨房らしきもの。全体的に白くゴツゴツした感じは密閉された空間。大きさ等が異なる箱馬がいくつかあり、情況や場景によって移動変化させる。キャストの衣装は、塵の王(坂口翔平サン)は黒、それ以外は全員白(サリィ役:香衣サンのボンテージ風ファッションも含め)という対比で分り易い。

    物語…以前は有名なフレンチ料理店だったが、それも昔のことで今では閑古鳥が鳴く。オーナーのジン(小谷真一サン)は、利き腕がマヒしているようで思う存分腕を振るえない。そんな時、塵の王が現れジンに憑りつく。塵の王が食するのが人の色々な「想い」である。声にならない吹き溜まりのような想いを食らい続け、ある存在になり魂が彷徨する。言葉と料理(嗅覚・味覚)、そこに共通しているものは理屈ではなく感性である。その言うに言えない本音の言葉を求めて辿り着いたのが…。
    ここからの場面転換(展開)が急のようで、多少 戸惑いを覚える。この場面の設定が白衣装に結び付き、人の心や感情に色がないという虚無感、浮遊感のようなものを漂わす。声にできない不平不満が充満した空間で、自分の存在をアピールすること、本心の吐露を促す人の温もりをしっかり描き出す。同時にSMっぽい行為で観客を笑わせ、歌で場を盛り上げるサービスで観(魅)せる。

    ここは精神病院か?…色々な悩みを抱えた人が入院しており、その症状が本当に精神を病んでいるのか。入院時の乱暴な扱い、それが精神疾患を疑うような台詞になっている。自分の意思に沿わない環境下、しかし、それに慣れ順応してしまう人間の弱さ。さらに「想い」という気持、それを醸成した記憶まで忘却してしまう怖さ。そんな不気味さは自分の身近なところにもあるかもしれないと思わせる。塵の王は人の不幸を集めた魂の結晶。が、人は人のために為す善意があれば救われる。何故 自分(ジン)は料理人を目指したのか、それがラストシーンで…。

    演技は軽妙であるが、しっかり観(魅)せる 力 がある。先にも記したが、鞭を使ったり、歌を披露するなどバラエティに富んだ観せ方は観客サービス。もちろん精神を病んでいるという設定であるから奇行や奇声、その他不気味な行動は上手く演じていた。この物語を支えているのは、このキャストの演技力といってよい。舞台技術ー音響と照明は物語の展開を程よく支え、効果的な役割を果たしていたことに好感。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2021/12/03 18:19

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