実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2021/11/30 (火) 13:00
座席1階
終戦直後、福岡県・添田町のトンネルに旧日本陸軍が隠していた大量の火薬を占領軍が処理する際に大爆発が起き、山全体が吹っ飛ぶという惨事で住民ら147人が犠牲になったという史実を舞台化した。今回も期待を裏切らない、素晴らしい舞台だった。爆発事故で犠牲になった人や、腕を吹き飛ばされるなど大けがをして生き残った人など、それぞれの人生を事故の前後でうまく描いていた。
今回は、役者たちがグレードアップしていたと感じる。客演の宮地真緒もよかった。桟敷童子の鍛えられた俳優たちによくついていったと思う。そして、毎度のことながら舞台装置と演出は見事だった。種明かしはネタバレボックスに入れてある。
当時の大手メディアが占領軍を恐れて事故を報じなかったという場面も出てきた。戦争が終わっても言論の自由がすぐに獲得されたわけでなく、占領下の報道が制限されていたというのも状況としては理解できる。それでもやはり、当時も気骨のある記者がいた。現場に入り、写真を撮り、話を聞いて事故を伝えた西日本新聞は、しっかり仕事をした、と言っていい。
舞台は事故の悲惨さだけでなく、被害者たちが戦後どのようにして国と戦って賠償を勝ち取っていくかというところも描かれる。最後まで住民たちに寄り添った物語で、好感が持てた。
力作である。見ないと損するかも。