優しい嘘 公演情報 劇団BLUESTAXI「優しい嘘」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★

    笠井渚さん演ずるママが経営するスナック、「消しゴム」。今宵も常連客で溢れ、酔っ払ったエロおっさんの唄う懐かしカラオケが轟く。暴走柔道王を彷彿とさせる河嶋健太氏の暴れっぷり、それを華麗にいなすホステス役の瀬上摩衣さんが可愛かった。開幕早々、ベロンベロンに酔っ払った空間に引き摺り込まれる観客を、小川大二郎氏演じる高校教師が更に駄目押し。真っ赤な顔で(メイクか?)トイレ周りに小便を撒き散らす醜態、へべれけ泥酔客に挟まれた客の気分を仮想体験させてくれる。死んだ母から継いだこの店をシングルマザーで切り盛りして来た笠井さん。そこに十年前金を持って失踪した妹が帰って来るところから物語は走り始める。

    兎に角、笑いが充実していてシリアスな場面にも必ず何かを挟む。クズ詐欺師役、三枝俊博氏の細かいツッコミが笑いをナレーション気味に説明。女子高生お笑いコンビ役の中村水優(みゆ)さんの顔芸もインパクト大だった。何と言っても主演の笠井渚さんが凄い。クライマックスからラストにかけての熱演は強烈。『顔』の藤山直美を想起。「優しい嘘」がスナック中に溢れ返り、皆がそれに包まれて涙する。かなり記憶に残る名演、お薦め。

    ネタバレBOX

    第一場の小川大二郎氏のインパクトが強すぎて、その後はまったりと展開していく。亡き母と長女(店のママ)、次女(詐欺師のイロ)、三女(ドロドロの不倫)の関係が核。
    笠井さんが娘の漫才を真顔で見詰めながらそっと涙する名シーン。(笑わせようと必死な娘も涙ぐみ、見事な対位法。)
    妹に告げる「どんな男と付き合ったってどうせ同じこと。」の名言。(これは「自分の人生を招くのは自分自身の性分だ」と云う哲学で、自分の心の風景を変えない限り同じことが繰り返されていくことに。変えるべきは自分自身なのだが、それが一番の難題でもある。)
    そしてラスト、母の最期の言葉を思い返し酔い潰れる笠井さん。二人の妹がその横で日本酒を酌み交わしている。ふと目が醒めた笠井さんは起き抜けにカラオケをセット、曲はキャンディーズの「春一番」。三人泣きながらフリ付きの大熱唱、何故だか全てが伝わるような素晴らしいシーンだった。

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    2021/11/20 00:01

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  • ヴォンフルー様
    ご観劇ありがとうございました!
    長女のセリフへの深いご考察、興味深く拝読しました。
    ひとつのセリフから哲学的な意味を見出される洞察力に感激です…!
    励みになるご感想、感謝しております。
    また次の作品でも、お客様にお楽しみいただけるよう精進して参ります。
    今後ともよろしくお願いいたします!

    2021/11/26 07:43

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