NEXT STAGE 公演情報 ACファクトリー「NEXT STAGE」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    面白い! 笑えた。
    劇中劇「劇団公文式第10849回本公演『時をかけるワイルドキャッツのギャラクシー大冒険』」は、笑劇であり、その舞台裏を演じる-この「NEXT STAGE」公演は更に衝撃的な結末。極上のショーを観ているようだ。同時にシェイクスピアの古典喜劇を彷彿させる場面も盛り込み深味を出す。それは、従来の演劇スタイルだけではなく、新たな演劇の在り方を摸索している、と思わせる手の込んだ描き(観せ)方だ。
    (上演時間1時間55分)

    ネタバレBOX

    場内の通路を挟んで、前方の客席も舞台として使用する。その中央に舞台監督使用の平台、上手に劇中劇用の音響担当、下手が照明担当のブースが設えてある。後方だけを客席にしており、それも市松(模様)座席にしている。コロナ禍とはいえ、劇場定員の半分にも満たない観客での上演という贅沢な観劇空間。舞台は基本的に素舞台だが、先の劇中劇のセットとして宇宙を表現?する廃墟的な光景や中央に大階段を設える。

    物語は「時をかけるワイルドキャッツのギャラクシー大冒険」の舞台監督が高熱のため稽古に立ち会えないことになり、急遽知り合いの男に代役を頼む。しかし頼まれた木下直也は演劇の舞台監督の経験はない。個性豊かなキャスト、スタッフに協力してもらいながら、何とか前に進めようと奮闘するが、問題が次々発生する。そんな時に座長の松本錠二が現れ、脚本や演出の変更を指示する。混乱し右往左往するスタッフ・キャストのドタバタ振りが滑稽で面白可笑しく展開する。この騒動を通してスタッフの協力、キャストのヤル気といった人間模様に変化が生まれる。同時に木下の中途半端な生き方の指摘、更には演劇の新スタイルとして観客参加型を模索していることも…。

    公演の魅力は、脚本の面白さはもちろん、演出のビジュアル面も含めた観(魅)せる力。稽古舞台ということもあり何も無い空間に、劇中劇の面白場面を次々に展開させ、後景に宇宙やワイルドキャッツを連想させる映像が映し出される。場当たりという現実場面ではキャスト同士の諍いや体調不良といった急場。展開がアップテンポで観ていて実に心地良い。これら全体が劇中劇であるという結末は、途中から何となく気づくが、それでも最後まで興味を惹きつける。現実、劇場のコロナ感染防止対策として防護服の男が消毒噴射して回る姿がリアル、また、その男は出番こそ少ないがアクションシーンは大迫力。もちろん全登場人物のキャラが立っており、皆 適役と思える。役者の演技力・好演がこの公演を支えていると言っても過言ではない。

    制作の女・田之上啓子が、主役ワイルドキャッツに抜擢されて、ミラーボールの光に照らされながら大階段を上る。その時の台詞、人(もしくは物事)は多面性を持ち、矛盾を抱えていることを表す撞着語法(オクシモロン)を用いていたようだ。架空・空想といったファンタジー場面を現実の人々が作り出す、しかし それさえも劇中劇という虚構へ追いやる。色々な世界が混在する何でもあり、それこそが喜劇の醍醐味。シェイクスピアは、機械と違って理屈や論理どおりにいかないのが人間、その矛盾するところが面白いと…。まさに作劇(劇中劇)を通して、それを地で行く。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2021/11/11 23:24

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