実演鑑賞
満足度★★★★
私小説的な痛い話だが、超常的設定で軟らかく膨らみのある劇世界を作っていた。
知らない劇団(ユニット?)だが、出演者の名を見て観劇。津村知与志、平原テツ、金子岳憲、安川まり(最近お目にかかってる)と美味しい面々だが、他の役者もぐぐると映像出演頻度高く、世間的にはこっちの方が著名のよう・・とすれば作・演出の加藤某はそれなりの御仁?と推察されるが、名も初めてで来歴は調べていない。その内また、行き当たるだろう。
ドラマツルギー的には、松本穂香演じる学卒フリーター(一応進路の希望はある)が「就職できてない」という一事に言い尽くされている所の、甘さに、つけこまれて泣きを見る男女関係の行方という軸と、ベビーシッターのバイトで知った男の子との奇妙な関係という軸が交差する作りになっている。前者は「社会性」という名の実は実体のないコードをクリアしている事を自他に示そうとする自我に翻弄される「オモテ世間」的なひりひりする時間が描かれる。しかし後者では、彼女の人間的な可能性の微かな気配を漂わせる。終局で「「社会性」的にアウト」な己の実像に向き合わされる手前、彼女が出会った「友達」(と敢えて呼ぶ)は利害関係のない(むしろ彼女が自分の部屋という場所の便宜を供与する)相手であり、初めて人間的な他者との繋がりの気配がみえるのだが、しかしその存在はこの世に属するがこの世ならぬものであり、ある種の「夢」と捉える事もできる。(ここで「マルホランド・ドライブ」を思い出す。)
前者での社会性における(主観的には大きな瑕疵とは思えない)不徹底は、あらゆる局面で彼女に破綻の影を落としているが、大地震(停電と帰宅困難者の3.11の東京を想起させる)を機にそれらがそれぞれの形で噴出する。
彼女は十分頑張っている・・・そう弁護したい自分がいるからこそ、恋人(というよりセフレ状態)のどこまでも上からの態度と最後には暴力でプライドを維持しようとする挙動にめらめらと怒りが湧いたが、しかし彼女のどうしようもなく甘い生き方、社会への態度(容姿に恵まれて来た事が災い?)にその遠因を求めてしまう。
まあそう描いているんだろうけれど。。私のかなり近い所にいる彼女のような人のことが思い浮かび、「痛い」と心で疼いていた。