フタマツヅキ 公演情報 iaku「フタマツヅキ」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    売れない芸人と、それを支え続ける妻(清水直子)、父親が嫌いな息子。何を言われても決して怒鳴らないでユーモアある話芸風に返す父親(モロ師岡)の飄々とした生き方に感心する。息子のカラク(杉田雷麟)もいい。小学校で父親の高座を体育館で開いたとき、舞台で父が息子をいじったためにクラスで笑われて以来の積もり積もった父への嫌悪を、20歳の、思春期ではないが大人でもない、少ない言葉とあからさまな態度で表していた。

    なかなかシリアスな舞台だが、息子にモーレツアタックするバイト仲間の女性(幼馴染らしい=鈴木こころ)の天真爛漫な明るさが救い。この二人も支え、支えられる関係になりそうで、父母の関係とだぶるのは心憎いつくりである。

    装置は、舞台中央の4畳半の畳の部屋とテーブルを置いた板の間の、ふすまで接した「二間続き」のセットだけ。くるくる回転して、この二間の家以外の場所もあらわす。

    ネタバレBOX

    若いスグル(長橋遼也)とマサコ(橋爪未萌里)が、沢渡小劇場のあるビルの屋上で出会ってから付き合うようになる場面が同時並行で描かれる。これが現在の父母の若い頃とは最初はわからない。(劇場の名前や「笑うカド」の企画、スグルの名で、注意していればわかるが)が、なぜ妻がそこまで夫を支えるのかが、死のうとしていたときに救われたからと言う過去があるからとわかってきて、納得できる。

    落語「初天神」を父と息子で演じるクライマックスも良かった。あれ、短いなと思ったら、この落語は「凧揚げ」のネタが続くそうで、その前に息子が下げてしまったということだそうだ、

    友人は「どんなときでもやめないで頑張れと応援してくれるのは励みになる? 重荷になる?」と、そこを気にしていた。私は息子の「支えてもらう生活だって、自分で選んだものじゃないか。だったら最後まで貫けよ」というセリフが刺さった。ロビーで作者の横田さんに「つらぬくことがだいじですよね」と感想を話したら、「それで苦しんでいる人の話なんですけどね」と返された。それはそのとおりだ。苦しいからこそ、貫くことは重みがあるし、迷いも起きる。

    横山拓也の芝居は私のお気に入り。「エダニク」「熱い胸さわぎ」など笑いと痛みに満ちた傑作だった。今回も秀作である。

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    2021/10/30 10:10

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