実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2021/10/28 (木) 14:00
「フタマツヅキ」とは二間続きの部屋のことだ。落語家の夢を追ったが鳴かず飛ばずでぬれ落ち葉のようになり、一人息子に蛇蝎のように嫌われている初老の男と支え続けた妻。その男が高座を持った小劇場でお笑いを続けるピン芸人と、ひょんなことからファンとなって結婚し、支え続けようとする女性。この二つの夫婦が二間続きの舞台で縦横の糸のように交錯する物語。構成がすばらしく、2時間ほどの上演があっという間で、さわやかな感動を残してくれる秀作だ。
芸のためなら女房も泣かす、という昭和演歌を地で行くような貧乏な家庭だ。妻に家庭を支えてもらっている負い目を心に刻みながらも落語を捨てきれない悲しさ、どうしようもない自分に対する怒りみたいな感情を、モロ師岡が熱演する。ほかの俳優たちも鍛えられていて、本音と違うことを言ってしまう男女の胸の内をうまく演技に乗せている。
お金はないが夢はある、と聞こえはよいが、夢を追うにも生活がある。その厳しさをストレートに表現しているから単なる夢追い物語に終わっていない。人間は支えあって生きていくものだとは分かっていても、支える心が相手を追い詰めたりすることもある。そうした一筋縄ではいかない人の心を、この芝居は丁寧に物語に織り込んでいた。
大阪出身の劇作家横山拓也率いる演劇ユニット。初めて拝見したがファンになりそうだ。