実演鑑賞
満足度★★★★
ヤクザの神竜組を率いる亡き組長の愛妻石田ひかりと、喜寿を迎えた!木村伝兵衛(岡森諦)元部長警部(現運転免許証更新センター相談役!)を軸に、決め台詞に彩られたつか版歌舞伎ともいうべき2時間。まず第一に音の芝居。つか芝居に音楽は決定的だったというように、キメ場面では、カッコいい曲がジャンジャーンとはじまる。次いで効果音。蹴り、殴る音、チャンバラの刀の音がいい。そして七五調に近い、カッコいいセリフの数々。石田ひかりはさすがの人気女優らしく、派手な感情表現はせず、抑えた演技で、そのかっこいいセリフを話すことに集中していた。ジャージ姿、シスター姿、そしてラストの襲名の艶やかな真っ赤な着物姿と、衣装も見事だった。
神竜一家と警視庁の刀を持った斬り合いのクライマックスは忠臣蔵のようだった。その意味でもかぶきを彷彿とさせる舞台である。
物語はあるのだが、筋を追うよりも、その場その場の台詞のぶつけ合いがかっこいい。ヤクザの仁義を切る所作指導の砂田桃子に、伝兵衛に引退を迫る熊田留吉ジュニア(新原武)。法務大臣逮捕という花道の提案に、伝兵衛は「公文書偽造なんて、そんな魂のこもってない犯罪で俺の花道にできるか」と拒む。組員の恋人は、愛の証に自ら指を詰める。組員もそれぞれ見せ場があって、シスター今日子をしたった少年の日思い出や、俺の血を体に入れてくれた組長への恩義、今日子に本当は恋していた秘めた想いの告白も。
皆が、格好よさを競う中、しのぎのために原発廃炉作業で1000ミリシーベルトを浴びて、次第に弱っていくボケのカン太(野田翔太)が地味に笑いと悲しみを醸していた。