Little Eyolf―ちいさなエイヨルフ― 公演情報 shelf「Little Eyolf―ちいさなエイヨルフ―」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    哀しく美しい夫婦の物語
    ほとんど身じろぎもせず、見入った60分。
    あとからじわじわと胸に迫る端正な舞台。

    あとはネタバレで。

    ネタバレBOX

    夫婦間にちょっとした隙間が生じたとき(と妻が感じたとき)に、妻は、その原因を夫そのものではなく、もちろん自分でもなく、仕事や夫の妹、さらに息子エイヨルフにまで見出してしまい、言葉によって、それらを攻撃する。
    何とも言えないような、そんな「もどかしさ」のようなものは、誰にでもあるのではないだろうか。

    それは、何に対して感じているのかわからないような「もどかしさ」であり、それを晴らすため、相手が家族であっても、言ってはいけないことを、つい、あるいはわざと言ってしまう。

    言ってはいけないことと知りつつも、妻が発した言葉は、結果、息子エイヨルフの溺死という事実となって、自らに降り掛かる。
    息子を失い悲しむ姿は、母の姿であり、言い放った言葉は別のものであった。悔やんでも悔やみきれない自分の過ち。責める夫。

    さらに、その事故がきっかけで、今まで夫婦間で(たぶん)触れてこなかった、パンドラの箱を開けてしまったのか、もともとエイヨルフが障害を持つことになった出来事までも夫婦でののしり合う姿は、哀しい。

    それまでは、言葉のやり取りはあるのだが、互いにその姿を見るわけではなく、「会話」ではない。台詞はすべて正面を見て発せられるだけ。そこには空しい空気だけがフィヨルドの冷たさのようにあった。
    断絶しかけていた(していた)人間関係。
    そして、ラストに夫婦が互いに手を握り、文字通り肌で感じて同じ方向を見つめる姿には、夫の気持ちや妻の気持ちで観ていたので救いを感じた。

    それは、夫婦で一番言いたかったことを言い尽くしてしまったことにより、目の前の霧が晴れ、現実と、パートナーとしての互いの姿に改めて気づいたためなのだろうか、少し光の差すものであった、この大切な分岐点は、もっと明確に示してほしかったように思う。

    ただし、手を握り合う夫婦の姿が、暗転しかけるところで、同じ方向を向いていた妻が顔を背けたように見えたのは、演出家のホンネなのだろうか。その姿はシルエットになって、心に何かを置いていった。フィヨルドの冷たい海に目を見開いたまま沈んでいくエイヨルフの姿とともに。

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    2009/05/21 04:00

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  • コメントありがとうございます。

    tetorapackさんの「観てきた」はいつも芯が通っていて、興味深く読ませていただいてます。

    舞台は練り上げられていたと思います。私は身じろぎもせずに観たのですが、ごそごそしてた人もいるにはいましたが(笑)。

    ラストは書いたとおりで、一点は少し気になりますけど。

    2009/05/23 04:26

    突然、失礼いたします。tetorapackです。
    いつも、関心持ってコメントを関心持って読まさせていただいております。
    実は、この「ちいさなエイヨルフ」、私も非常に興味を示していた公演だったのですが、観劇予定日に別件が入ってしまい、残念ながら観ることができなくなってしまいました。それだけに、他のメンバーの「観てきた!」コメントが気になっていたのですが、アキラさんの詳細な感想を見ることができ、わずかばかりでも公演の情感に触れることができ、ありがたく思いました。
    「ほとんど身じろぎもせず、見入った60分」となると、やはり、相当練り上げられた芝居だったのですね。また、「ラストに夫婦が互いに手を握り、文字通り肌で感じて同じ方向を見つめる姿には、夫の気持ちや妻の気持ちで観ていたので救いを感じた」とのコメント、なんかジーンときました。
    これからも、興味深く、読まさせていただきます。ありがとうございました。

    2009/05/21 23:58

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