実演鑑賞
満足度★★★★
舞台を二重に組んだグローブ座風の裸舞台の中央の高みに木材の森風のオブジエが立っている。それだけの愛想のない舞台に、二十人余の役者が次々に現れてはセリフを朗唱風に言う。稽古中はコロナ禍だったので、俳優間の距離をとったという。それがリアルではない独特の空間になっている。音楽は笛や小太鼓が入っているが現代音楽で、時に踊りもある。振付も、踊り手もパッとしない。テキストレジと演出は客演出の鈴木勝秀。近頃、現代化やコスチュームプレイ化でサービス過剰の「夏の夜の夢」を見慣れていると、森の中の恋人の取り違えと、町人たちの御前芝居に絞った構成で、祝祭劇らしい喜劇的なシーンの連続で休憩なしの二時間。演出が劇場パンフで正攻法のシェイクスピアと言っているように、この作品は、あまりごてごてと飾らなくても面白いのだと、納得できる舞台だった。
しかし、このように芯だけを上演するならば、俳優には今少し頑張ってもらいたい。かつてはこの劇団のシェイクスピアは安西徹雄訳だったが今回は松岡和子訳。言いやすくなったからか、若い俳優たちはほとんど、セリフを一気に口にするだけで,言葉のニュアンスの表現ができていない。味気ないことおびただしい。この劇団には声優としても高い評価のベテランがいるのだから、もっとキチンと教えたらどうだろう、この際、口移しでもいいと思う。そのうちにうまくなる。
この上演台本だと、音楽と、それに伴う踊りは芝居の雰囲気に大きな影響を及ぼす。音楽の曲は今風との折衷で悪くないと思うが、編曲が雑な感じがする。振付はやはりプロの振付師をスタッフに加えるべきだった。折角の妖精たちがそれらしく見えないではないか。
劇場は満席。コロナ明けの祝祭気分も溢れていて、観客も楽しんでいる。飾らないシェイクスピアの良さを久しぶりに見た。