実演鑑賞
満足度★★★
能の『弱法師(よろぼし)』をモチーフに捨てた盲目の我が子を家に連れ帰る父親の話。···では無いようだ。いろんな要素を詰め込み過ぎて、逆に散漫な味になってしまった印象。好き嫌いはかなり分かれるだろう。料理と同じで旨味成分が多過ぎても不味く感じるように人は出来ている。この題材ならもっとタイトに絞り込んだ方が客はのめり込んで観た。
ステージの下部が出入りできるようになっていて、グレート・ムタ宜しく役者が匍匐前進で消えたり現れたり。見たことのない装置で演者を撮影し、その姿をイラスト風に変換してリアルタイムでステージ背面の二面の壁に投影してみせたり。アイディアと技術が迸る。変換した3Dデータ画像はバレットタイムのようにぐるぐるぐるぐる廻る廻る。何じゃこりゃ未来都市か?と驚いた。特筆すべきは衣装デザインで、鈴木みのるの剃り込みや象形文字のようにジャケットをカットして、それを糸で縫い合わせたオーダーメイド。色々引っ掛かるので、着脱は大変そうだ。
駅で飛び込み自殺の高校生、目撃者は元裁判官と主人公である盲目の青年。青年は目が見えないものの、「許すな」と呟いた轢死者の最後の言葉を聴き取っていた。元裁判官の男は、その青年が自分が棄てた我が子であることに気付く。
女刑事役の松本真依さんが非常に魅力的。クールにもコメディにも振れるキャパシティ。毎日毎日彼女の下に自首してくる高校時代の友人役は橘カレンさん、彼女の告解すべき犯した罪とは?
素晴らしかったのはイマジネーションを刺激する台詞の数々。「天国は太陽、それは夕陽の中にある。」「地獄は影の中に。人は誰もがそれを連れて歩いている」。