海の上のピアニスト 公演情報 シアターX(カイ)「海の上のピアニスト」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

     一人芝居研究会のメンバーによる演技、映画にもなった作品だという。

    ネタバレBOX

    タイタニック級豪華客船の一等室船客の演奏会に使われる部屋のピアノの上に捨てられ、船員に発見され彼の子として育てられるが、名付け親でもある義父は8年後事故の為他界する。然し捨てられた子・ノヴェチェントは出生証明書も無ければ戸籍も国籍も実の親も実際無い。陸に上がっても碌なことは無いとの大人達の判断とそのピアノの天才としての才能と物怖じせず、図抜けた才能を持つ人間特有の悠揚迫らぬ態度で誰からも愛され、船で生涯過ごすことになった。原作はイタリアのアレッサンドロ・バリッコの独白劇「ノヴェチェント」である。尺は90分。
     兎に角、物凄い台詞量を1人何役もやりながらこなす役者の負担は大変なものなのに、また作中の主人公・ノヴェチェントは男性であるのに、演じたのは女優である。無論、台詞量だけでも大変な量だし、何役もこなすから体力や水分の消費も半端ではない。そこをアルコールを飲む体で瓶に水を詰めた物を飲んで凌ぐ演出もグー。因みに一人芝居研究会のメンバーは自分で演出・演技総てを受け持つから、最も基本的な板上の体調調整も総て自分の判断でしなければならないのだ。音響や照明は専門の方が就いているが。
     脚本の良さは、孤高の天才音楽家の逢着せざるを得ない究極のテーゼを過不足なく描いている点だ。即ち境界の無い無限を相手に己は何を対置し、対置し得たことによって得られる束の間の均衡と平衡に載って何をどのように配置しどの1音によって世界全体を集約するかというテーゼである。またそのようなことを可能たらしめる数式の解を見付けることだ。更にこの解が得られた暁に己の存在をどう始末するか? である。この知的且つ実存的テーゼを解く旅の何と清々しく高潔なことか! そしてその解の何と奥深く切ないことか!
     このような作品を演じた女優・安藤繭子さんの力演に拍手!

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    2021/09/26 01:32

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