ムサシ 公演情報 ホリプロ「ムサシ」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★

    第一幕85分休憩20分第二幕75分。
    少し早いが蜷川幸雄七回忌と云う事で、蜷川の『身毒丸』オーディションで主演デビューした藤原竜也氏主演の『ムサシ』。井上ひさしの遺作『組曲虐殺』の一つ前の作品でもある。配役も蜷川幸雄に縁のあるメンバーを揃えた。『フェイクスピア』の体調不良騒動で気になっていた白石加代子さん(79歳!)は驚く程に元気。そこそこ高さのある縁側をヒョイと飛び降り、踊り捲り舞い捲りコメディエンヌの役どころを掻っ攫う。そう言えば武田真治と白石加代子主演の『身毒丸』をここシアターコクーンで観たことを思い出した。声でキャスティングしているのかと思う程に役者皆の声が良い。塚本幸男氏の貫禄、大石継太氏の法話の素晴らしいこと。
    異様にざわめく竹林が効果的で、暗転と舞台転換にじっくり時間を掛けることが作品の重みを増す。能を効果的に取り入れている。
    演出も兼ねた吉田鋼太郎氏はやりたい放題好き放題。素で藤原竜也氏や溝端淳平氏が何度も吹き出す。
    藤原竜也氏は生で観ると超カッコイイ。映像の何倍も魅力的なスター、とにかく絵になる。

    物語は宮本武蔵(藤原竜也)と佐々木小次郎(溝端淳平)の舟島の決闘から6年後、鎌倉の禅寺宝蓮寺の寺開き(開山)。参籠の禅の最中、九死に一生を得ていた佐々木小次郎が現れ、武蔵に果し合いを迫る。沢庵和尚(塚本幸男)や柳生宗矩(吉田鋼太郎)等は何とかその無益な決闘を取り止めるように色々と策を講じるのだが···。

    ネタバレBOX

    斬り落とされた左腕がピクピク動いたり、ハラリと落ちる武蔵の鉢巻、ドリフ・リスペクトな五人六脚···、と見所満載。小次郎の剣術指南の足捌きが、いつしか全員で踊るタンゴになる場面、客席は大ウケだった。

    結局の処、この地を彷徨う成仏出来ない亡者共が人に化け、武蔵と小次郎の決闘を止めさせることに願を掛けて、あの手この手を尽くすと云うネタ。仏教の説く“三毒”を持たない者だけが刀を抜く資格があると告げる。「欲張ること、怒ること、愚かであること」。煩悩に打ち勝つ為に自身の弱い心と向き合い、敵は己の中に在ることを知る。その過程で人と人との争いは失くなると。

    この戯曲がイマイチなのは、この件で武蔵と小次郎が生き方を変えるとは到底思えない点。矢張りそんなことはお構い無しでひたすらに殺し合う方がしっくり来る。それを呆然と眺めるだけの無力感に苛まれた亡者達の方がリアル。

    そして、佐々木小次郎も実は死者で、舟島で手当の甲斐なく死んでいたことにする。死者の妄執に塗れ幻影と取っ組み合っているだけだった自身の人生と存在に嫌気が差した武蔵は、そこで初めて亡者達の言い分に耳を貸す。
    ···的な事を帰り道つらつら考えていたら、渋谷で二回職質に遭った。

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    2021/09/24 21:00

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