The Weir -堰- 公演情報 劇団昴「The Weir -堰-」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★

    これ本当に飲んでるの?冒頭からギネスの黒ビールの栓を抜き瓶からゴクゴクと飲る主人公(永井誠氏)。「うわっ飲みてえ!」と客席が揺れる。こっちはイングランドだが、「ワールズ・エンド 酔っぱらいが世界を救う!」を重ねてしまう。只々パブをハシゴしてベロベロに酔うクズ中年達の与太話。観ていると飲みたくなってイライラする所も重なる。瓶ビール、生ビール、ウイスキー、白ワイン、ブランデー。観てるこっちが酔ってくる。(ブログを読む限り、ノンアルコールらしい!?)
    Twitterで見て気になった舞台美術は最早芸術。新国立劇場並の精度で職人の腕前。本場アイルランド人の感想を聞いてみたい。ケチの付けようがないこの舞台を用意されたら役者陣も気合いが入ることだろう。

    パブのマスターと幼馴染の常連三人、初めてやって来た綺麗な女性。五人芝居の熟練したテクニックに唸らされる。
    升田幸三を思わせる永井誠氏の無頼な風貌。加勢大周を想起させる岩田翼氏のスマートな作法。味のある平林弘太朗氏の優しい物腰。聞き役に徹するが、正しく場を律していく高草量平氏の立ち居振舞い。そして、この物語の要となるあんどうさくらさんのリアルな存在感。五人の細かな遣り取りの完成度が高い。地元の紹介を兼ねて、新顔の女性に三人が自身が経験若しくは耳にした心霊体験を語っていくことに···。
    そしてあんどうさくらさんも語り出す。

    ネタバレBOX

    あんどうさくらさんの語るエピソードは秀逸。これをどう捉えるべきか、じっと考え込むような内容。そのどうしようもない空気感の中、二人が店を立つ。
    残った三人、主人公が語るのはレイモンド・カーヴァーの「ささやかだけれど、役にたつこと」を思わせるエピソード。無力感に苛まれ、言葉を失う。

    孤独や暴発する感情や自責の念を抑える為の“堰”がアルコールなのだろう。そして、この地元の知り合いが集うパブ、それ自体が。物凄くありふれた、世界中の飲み屋で皆が本能的に交わしている作法。今夜、すべてのバーで。

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    2021/09/22 22:16

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