実演鑑賞
満足度★★★★
舞台が明るくなると、看護婦が殺された病院のサロンの現場検証のストップモーション。
その病院は草刈民代の院長が仕切る精神病院で,そこには、アインシュタイン(中山祐一郎)やニュートン(温水洋一)を名乗る狂人、太古の王の宣言を信じる狂人(入江雅人)が収容されている。彼らは次々と善良な担当看護婦たちを殺していくが狂人とあって、罪には問われず、病院に収容されている。まるで、ミステリ劇のような出だしだが、舞台はそこから二転三転、ミステリ劇はやがて、陰謀劇になり、さらには国際スパイ劇になり、時には社会劇にも喜劇にも変貌する。登場人物は同じながら、ストーリーの進行に従ってさまざまな様式で劇が進む。登場人物たちも時に叡智溢れる物理学者だったり、時には狂人だったり、スパイだったり、忙しい。訳が分からないと、言うことはないのだが、観客がストーリーを追うのも容易ではない。
ヨーロッパのほかの国・ある意味、馴染みのあるロシア、イギリスやフランス、とは全く違った手つきのドイツの舞台劇だ。見ていれば、一つ一つのシーンはその飛び方が面白い、という事はあるのだが、その芯がつかめないもどかしさが残る。
ドイツの現代劇はわが国ではブレヒト以外は、ほとんど系統的に上演されないが、この作者デュレンマットは、ミステリの翻訳もある。戦後まもなく上演された「貴婦人の帰郷」が、数年前クリエでも再演された。ドイツでは大当たりの人気作家の代表作、と言われても、なぜ?、どこが?、当たるのか腑に落ちない。そこが国境を渡る「演劇」の難しさである。
まぁ、蜷川や野田の芝居をアチラへもっていっても、ホントに分かっているのかどうか、もどかしいところがあるから似たようなものか。習うより、慣れろ。とせいぜい見てみるしかない。そのうちに、フッとあ、なるほどと分かるのがこれまた演劇の面白いところなのである。
草刈民代はじめ俳優たちは、ノゾエの多分原作・戯曲に沿った演出でみなこのいそがしい喜劇を熱演しているが、客席の反応はいま一つ。ほぼ、1時間づつの二幕。休憩15分。
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