実演鑑賞
満足度★★★★
面白い!五人の俳優だけでこの物語を語り切るとは···。複数の役を兼任する訳でもなく(クライマックスの舞台だけ三人が別の役をこなした)、これは凄い。ある種単純でよくある話なのだが、その実オリジナルで特別な話に仕上がっている。全ては才能次第なのだなあと感じ入った。
そこそこ人気のある小劇団に所属しているヒロイン。同棲している彼氏は自分のビストロ(大衆居酒屋)店を経営している。彼氏の店の常連客は偶然にも劇団の大ファン。稽古終わりに主催の劇作家と飲みに行くと店は芝居の話で大盛り上がり。こんなふうに二人の日々はずっと続いて行く筈だったのだが、コロナウイルスが全てを変えた。
ヒロインのゆいさん(a.k.a.倉地裕衣さん)はもろアイドル顔。日テレのアイドル・アナウンサーだった永井美奈子を彷彿とさせる美しさ。
彼氏役のハマツタカシ氏はジャンポケ太田と宮迫を混ぜたようなルックスで親近感を持ち易い。観客はその心情にスッと感情移入してしまうだろう。
今作のMVPと言ってもいい、大活躍の七味まゆ味さん。リアルな舞台ファンの一般人から狂気の天才女優、ベロベロの酔っ払いOLと、ぼんやり観ているだけで彼女の世界に頭から呑み込まれていく怖ろしさ。強烈なインパクト。
無声映画の伴奏のように作曲家佐々木聖也氏のエレクトーン生演奏が奏でられていく。これが天才的で、どんなつまらない舞台でも佐々木氏さえ袖にいれば作品として成立してしまう程の腕前。筋少の「青ヒゲの兄弟の店」に似たフレーズがあったのだが偶然か?
悲しさと愛しさでぐちゃぐちゃになるラストの畳み掛けは必見。二人それぞれ別々に、独り嗚咽を洩らすシーンが焼き付く。