実演鑑賞
満足度★★★★
超面白い。日本映画でこんなものを作れれば客は戻って来る。伊丹十三が大絶賛された頃、「そんなに面白いか?」と思ったものだが、今作を観て色々と腑に落ちた。『シン・ゴジラ』で日本人にしか作れないジャンルの実在をしかと感じたように。
多種多様な役者達、他の劇団ではまずお目にかかれない陣容。ルックスだけで痺れる。誰一人無理して作ったように感じるキャラがいない。
地方都市(松山市?)にある双葉百貨店。主人公はお客様相談室長の九条侠介(内藤トモヤ氏)。退職する事が決まっている。新たにメンバーとして社長がスカウトしてきた倉持侑(和泉輪さん)が加入。次々と襲い掛かってくるクレームの嵐に誠意を持って立ち向かう。プロ・クレーマー達はヤクザや風俗嬢、たかり屋、中学校女教師など多種多彩。“クレーム“と“苦情”の違いを後任達に伝えなければいけないのであった。
内藤トモヤ氏は深みのある存在、作品に重厚感を持たせる。伊丹映画の大地康雄的味わい。宝飾店店長役橋本智恵子さんが美しく、フジテレビの元局アナのような品がある。スナック経営のクレーマー役、大図愛さんもドギツく魅力的。正論で怒り狂う客、田野良樹氏もとにかくリアルな立ち居振る舞い。たかり屋稼業の親子、香戸良二氏と垣内あきら氏は最高に立ったキャラ。女教師役の高山佳子さんも怖かった。謎の苦情女、高岡季里子さんの不可思議な空気感。
脚本の書き方のお手本のような作劇、感心した。暗転や移動中の会話、細かい演出にさりげない工夫。もっと皆に観て欲しい作品。