実演鑑賞
満足度★★★★
久々のあうるすぽっと。最後は何時だったかと手帳を捲ってみたら1年半前、同じくTfactoryの「クリシェ」であった。その僅か2か月前「8人の女たち」をあうるで観ているが随分昔の事のように思え、「クリシェ」はつい最近な気がする。この記憶の錯覚はどこから・・?
無駄話はさておき。
証言を構成した舞台は一昨年の「ノート」もその範疇と言えそうだが手触りは全く違う。ある死刑囚の死刑を巡る立場の異なる4名がそれぞれ一しきり証言をするので「4」であるらしい。自身の証言かと思いきや、「うまく行かないので立場を入れ替えたい」とこぼす者があり、また最初から「証言」の時間が再生される。極刑判決を支持した裁判員の一人、刑務官の一人、死刑執行指示にサインを書いた法務大臣、そして死刑囚。ある種の思考実験の模様であるが、役者は5名。一名が脱落した事で、実験の進行役としてそれまであまり姿を見せなかった残りの一名が証言する役を買って出、最終クールの気配から収束へ向かう。
仮設ホリゾントのような白い可動式の壁面と床面には、証言者ごとに木漏れ日や抽象的な模様の映像だか照明が当たり、場所と時を特定しない異空間を作る。意味深な台詞とも相まって、果して証言者がその役どころを担わされた実験の参加者に過ぎないのか、設定に深く関与している(実は本人性が高い)人物なのか、峻別が危うくなって来る。
テーマは明確に死刑制度の是非という事になるが、証言で構成される物語が仮想でありながらリアルさを帯びる微妙なラインが川村氏の狙いである事は明白。ただし終盤は混沌として整理を付ける事なく観客は放り出されるが、実に感触の良い時間であった。この所必ずどこかで寝るのが観劇のスタンダードとなった自分だが、深い眠りに落ちた御仁が周りに散見される中、一度も寝落ちせず観た(台詞落ちは多々あったが)。役者が魅せる舞台でもあり。