つみ 公演情報 アブラクサス 「つみ」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★

    ガラガラの客席、20数人程度か。逆に期待は高まる。こういう状況でこそ、凄え舞台を観せてくれ。
    シャーリーズ・セロンがアカデミー主演女優賞を獲ったことで有名な女シリアル・キラー実録映画『モンスター』。それをモチーフに『羊たちの沈黙』や『ヘンリー』、『ラストダンス』や『デッドマン・ウォーキング』の風味も。
    子供の頃のトラウマが人の後半生を決定付け、徹底的に苦しめ続けることは最早自明の理。それに対してどんな回答を導き出せるのか、救済に至るのかがこの手の作品の最重要テーマ。

    主演の女性牧師役は頼経明子さん、相対するシリアル・キラー役は作・演出アサノ倭雅(しずか)=羽杏(うあ)さん。育ての親役の山森信太郎氏が幾つもの見せ場を作り、相対する被害者の母親役、坂東七笑さんも負けじと見せてくれる。被疑者のレズビアンの恋人役、古藤(ことう)ロレナさんが美しい。初見サヘル・ローズさんかと思った。

    頼経明子さんの醸し出す雰囲気が良い。常にハンドバッグにチョコを入れてつまみ食いしている。彼女をシリアル・キラー役にして観てみたい気も。
    Stingの「Englishman In New York」が効果的。

    ネタバレBOX

    やろうとしていることは支持できるのだが、全てにおいて力不足な印象。構成を変えて現実味のある視点で語り直すか、別の人間が述懐する物語を後年他の誰かが聴いているように話を幾重か被せた方が良いのでは。直接的にやると粗が目立ち過ぎ、些細な点のチープさばかりに引っ掛かってしまう。設定に既視感があり過ぎて登場人物に感情移入できない為、ちっとも胸に来ないのだ。
    プロローグの教会での捨て猫のエピソードが秀逸。猫を中心に据えて病んだ痛んだ魂の交錯に出来なかっただろうか?三人殺しているのに一人目のエピソードしか語られないのも不思議。古藤ロレナさんを庇っているように見せかけたミスリードも解せない。

    「加害者(幼い自分を性的に弄んだ牧師)を許したい、許せる道を模索する」と言う女性牧師の言葉は凄味がある。そこで遠藤周作のように、本当の意味でのキリストが出現しなくては駄目な話だ。
    不用意な稚拙な台詞、安っぽく雑な演出が気になる。80年代のレンタル・ビデオでよく観たB級アメリカ映画のシーンの寄せ集めのような。音楽は83年っぽい。
    ただ高い志は本当に素晴らしい。何故こんなにも子供への性的虐待が多いのか?キリスト教の説く“愛”と“性欲”の関係性を掘り下げてみるべきだろう。

    0

    2021/08/23 23:17

    0

    0

このページのQRコードです。

拡大