丘の上、ねむのき産婦人科 公演情報 DULL-COLORED POP「丘の上、ねむのき産婦人科」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    客観性ある内容を役者が熱演で体現する力作。
    公演の魅力は書籍や映像資料だけではなく、実際に約30名弱の経産婦や夫婦へのインタビューを行い、収集したエピソードを再編集して演劇化しているから、説得・納得感に力がある。もちろん描かれた7場(2場は上演時に削除)だけではなく、端的に言えば人の誕生(出産)数だけドラマがある。それを演劇化することは出来ない、というか不可能であろう。だからこそ、取材等を通してある程度類型化が出来そうな場面を描いている。公演は出産の観点で描いているが、生があれば死も表裏のような関係にある。当日パンフに作・演出の谷賢一氏が「生の背景に一体どんな思いと考えがあったのか」と書いているが、むしろ描かれなかったが、流産・死産といった悲しみを経験する場合もある。それゆえ、その不安を乗り越えた先の喜び、無事に産まれた安堵が倍加して描くことも出来ると思うが…。
    (上演時間2時間)【Aチーム=男女の性別のままの普通版】

    ネタバレBOX

    舞台美術はシンプルで、上手・下手側に椅子が並べられ、7つの場面に応じて移動させ情況や情景を表現する。後景は照明効果を利かせるためガラス仕様の壁面を幾つか組み込み、彩光の美しさを強調する。また各場の上演前に状況を説明する字幕が映し出され、物語の概観(プロフィール等)を示すので、結婚前カップル、もしくは夫婦の心情が何となく解る。

    物語は7場面あるが、その中で2つの場面について。
    1つ目は、若いカップルが出産に対する不安や悩み(どちらかと言えば出産費用、今後の生活といった経済面)といった、生まれるが前提の話。
    2つ目は、不妊治療に時間や経済的な負担を感じている夫婦(本作は女性側が対象)。産めないが前提の話。
    どちらも切実な問題意識であるが、その悩みの前提になる事が違う。その違い夫々で悩む過程が実にリアル。もちろん、取材等で得たエピソードが基になっているだろうが、舞台化すれば間接的な話(客観的)。それを役者が対象者の不安、悩みを受け止め、リアルにその人物像を立ち上げていたからこそ取材等が生きてくる。役者陣の熱演、全体のバランスが良かった。

    公演で演じられた場面…出産(流産、死産等含む)や不妊治療は、人の数だけドラマがある。演劇によって、ここで描かれた体験はもちろん、これから経験するであろう人の想像力の馳せる範囲まで広がる。その意味では考えさせる内容だ。
    観終わってみれば、脚本・演出・演技そして舞台美術の総合力を十分発揮した力作だ、と思う。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2021/08/21 17:59

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