実演鑑賞
満足度★★★★
昨夏、コロナ渦中の演劇界でポジションを得ようと足掻く青年を主人公に大所帯で描いた「BLACK OUT」が秀作であった東京夜光。アゴラで何をどうやるのか想像がつかなかったが、今作はのっけから「人類初のタイムトラベル」の訪問先の場面から始まるSF譚で全く趣向が違った。いわゆるタイムリープ物、ではないが、架空の未来世界(バーチャル世界でもある)の<ルール>を読み解く作業が(ミステリー同様)観劇の大きな要素となり、4名の俳優の内約1名が都合上複数の役に使い回され笑も取っていたが、作者は人類の未来に待ち受ける進化(あるいは退化)という視点を一本貫く事で諸々をねじ伏せつつ最後まで書ききった、という印象だ。劇団化第一作目として実験的な公演になり得たと思うが、「次」へと渡すためのどういう中継点になるのか、は見えない。見えないながらも作者の筆の胆力に期待感を持たせるものはある。